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お題
クリスマスプレゼント






暖房の効いた暖かい部屋、お風呂あがりのリラックス時間をゆっくりと過ごしていた今日この頃。

「そっか……もうすぐクリスマスなんだ……」

読みかけの本から視線をふと壁に移すと、壁掛けカレンダーが眼に飛び込んできた。カレンダーの暦を見て来週の今日がちょうどクリスマスに当たることに気付く。

「……プレゼント」

何か用意しなきゃと思うけれど、働いていない僕には軍資金がない。何か買おうにも、お金は京丞さんからもらうことになっちゃうし、それじゃあ意味がない。
頭を抱えて暫く悩んでいると、紅茶を入れてきた真柴さんが声を掛けてきた。

「どうしたんですか」

「それが……」

クリスマスに京丞さんにプレゼントを渡したい旨を伝えると真柴さんは一緒に真剣に考えてくれた。
お金が掛からなくて、京丞さんが気に入ってくれるプレゼント………。
考えても考えても思い付かなくて、僕は途方に暮れてしまった。京丞さんが欲しいもの……と考えてみるが、全く分からない。そのことに、僕は京丞さんのことを全然知らなかったんだと愕然とさせられる。

「まあ、咲さんがくれたものなら何でも喜ぶと思いますよ」

真柴さんはそんなことを言ってくれるけど、本当にそうなのかな……?










これといっていいプレゼントが思い付かないままクリスマスイブ当日になってしまった。プレゼントという懸念事項を抱えていた僕は何時にもなく鬱ぎ込んでしまっていた。

「咲」

「え、あ、おかえりなさい……」

プレゼントが用意出来なかったという後ろめたさから声にも覇気が出ない。こんなんじゃあ京丞さんに心配を掛けてしまうと思っても心は晴れない。

「出掛けるぞ」

帰ってきて早々、着替えもせずに京丞さんは僕を屋敷から連れ出した。行き先も告げぬまま強引に車に乗せられ、発車。窓から見える通りはクリスマス一色で更に僕の心を鬱屈にさせる。
車が停車したのは、高級感漂わせるホテルの前だった。京丞さんは無言のまま僕を連れ出しホテルに入ると、挨拶にきた支配人らしい人を一瞥してエレベーターホールへと足を進めた。
チンという電子音が鳴り、着いた先はレストランだった。エレベーターが開いて直ぐに、出迎えるように給仕が来て席に案内してくれた。一般のお客さんから全く遮断された空間に通され、給仕が退出する。京丞さんが席に座るのを見て僕も慌てて席に着いた。
何も聞かされないでここまで連れて来られたけど、どうやら今日はここで食事をするみたいだ。

「あ………」

席に着いて右を向くと、全面ガラスとなっていて街が一望できた。イルミネーションと化した夜景が胸に深く入り込む。

「綺麗………」

「気に入ったか」

「はいっ」

「そうか………。久し振りだな、咲の満面の笑みを見るのは」

「え……?」

どこか安心したような面持ちの京丞さんに疑問を抱く。

「最近、鬱ぎ込んでいただろう」

その一言で悟った。やはり、気付かれていたんだ。余計な心配を掛けてしまった……。

「今日のことと関係あるのか」

京丞さんの洞察力に脱帽してしまった。僕がクリスマスのことで悩んでいることを分かっていたんだ。
僕は全てを白状した。
そして最後に謝った。
プレゼント、用意出来なくてごめんなさい、と。

「咲」

優しい声が俯く僕に降り注いだ。

「今ちょうど欲しいものがある」
「な、なに……?」

弾かれるように頭を挙げた。
京丞さんが望むものなら、喜んであげてあげたい。でも今、僕の手持ちは全くないし、何かあげられるものなんて何もない。一体、何なんだろう……?

「お前からの接吻」

「えっ……」

意外なことに目を見開いた。
次に顔中熱くなった。

「で、でも……」

「俺が今一番欲しいものだ……くれないか……?」

切なくなるような顔で迫られて、僕は徐に立ち上がり、爪先立ちをして京丞さんに近寄った。












「メリークリスマス」








おわり






―――――――――――――――
あとがき

休止中にブログに掲載した作品。
咲と京丞のクリスマスの話。
甘い2人をお届けしました。



20111225 改訂
(20081224 ブログ掲載)





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あきゅろす。
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