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お題
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動物園だ。
少し前に、京丞さんが連れて来てくれた。初めての動物園に、凄く興奮して、京丞さんを引っ張って園内を歩き回ったのを覚えている。最近元気がない僕を気遣って、連れてきてくれたのかな。
そんな真柴さんの心遣いに、心が癒される。僕は先程までの暗い気分も忘れて、存分に楽しむことにした。

京丞さんと来た時は、見るもの全てが新鮮で、動物の名前を教えてもらいながら、園内を回った。中でも気に入ったのがライオンだった。百獣の王と言われるだけあって、餌を食べるときの姿は迫力があった。
そんなライオンがいる猛獣館の前にあるのが、鳥たちがいる鳥類の森だ。世界中の珍しい鳥が、森をモチーフとした檻の中に展示されている。側面は鉄でできた格子で、天井は高く、一面ガラス張りとなっていて、良い天気が窺うことができる。
色鮮やかな鳥がたくさんいる中、僕が惹かれるのは鷹だった。鋭い嘴に、鋭い爪、更に翼を広げたその姿に圧倒される。檻の前で見入っていると、隣についていてくれた真柴さんの胸ポケットから、電子音が聞こえた。

「すみません、少し席を外します。ここから、絶対動かないで下さいね」

ポケットから携帯を取り出し、画面に映し出された名前を見て、真柴さんは僅かに顔を強張らせた。何か問題でも起きたのかなという心配を余所に、真柴さんは笑顔で僕に席を外すことを告げてきた。大丈夫ですかと声を掛ける間もなく、真柴さんは人気のない方へと歩いていってしまった。残された僕は、ただただ心配で、でもここを離れないようにと言われたからには、ここを動くことはできない。ここで1人、真柴さんの帰りを待った。

「ふうー……」

やがて、鷹を見上げるのも疲れてきた。
何時間見ても飽きない自信はあるけれど、首が痛くなってきてしまった。少し一息付いて、近くにベンチがないか探そうと踵を返そうとしたら、人にぶつかってしまった。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

完全に僕の不注意で、ぶつかってしまった。幸いに、相手に怪我はなかったみたいだ。だからといって、謝らなくていい訳ではなく、僕は目の前の人物にしっかりと謝りを入れようとした。しかし、僕の口は固まってしまった。

「まあこっちも悪いけどさ、そっちも気を付けてよね」

目鼻立ちのはっきりした顔立ち。
大きな目は黒目が大きく、お人形さんのようで。鼻筋はすっと通って、日本人離れしている。でも、その髪は漆黒で艶のある綺麗な髪質だ。







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