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お題







手首から流れ、腕を伝う赤い筋。
朦朧とする頭でそれを見詰めていた。

温かい。

その温もりに生きている証拠を感じる。
自分の意志が全く尊重されない此処では、この温もりだけが生の証に思えた。

人間として扱われない自分。
僕に人権なんてなくて、ただ男の望むままに身体が開かれる。
抵抗は無駄。
すればするほど酷くされることが分かると僕は一切抵抗することを止めた。
ただ悪夢のような時間を、食いしばって堪えた。

全てが終わると男は去っていく。
それが男にとっての義務であるかのように、一日に一度は此処に来て僕を抱いては仕事へと戻る。

僕は残されたこの籠の中で
今日も生きている証拠を感じる。

このまま目を閉じたまま、終わっていればいいのに。二度と目を覚ますことなく、幕が引かれれば―――。
不可能だと分かっていても、僕は願い続ける。
僕にはそうするしかないから。









―――――――――――――――
あまあまでもエロでもない籠短編であります。まあ、しかし鬱々のシリアスですが。
シリアスはまだ書きやすくて楽です。
しかし籠の短編を書くのは、ネタバレしそうで恐ろしいです。続編で書くシーンと被らないようにしなくては(まあつまる所回想シーンが用意されている訳ですよ)



2009/08/09
(2008/10/01)





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あきゅろす。
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