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お題
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ドサッと何かが倒れる音が薄暗い路地裏に木霊した。つい先程まで生を成していたそれは今は無残にもただの塊にしか過ぎない。……一発だった。たった一発の拳銃の弾が彼の頭を貫いたのだ。

――――――カラン

今度は甲高い音が響き渡った。アレンはゆっくりと後ろを振り向き拳銃を握る左手に力を入れた。彼の容姿は一見、男にも女にも見える中性的な顔立ちで、また整ってもあった。しかしその表情はまるで氷のように冷たく、彼の容姿の良さを曇らせていた。

「……………」

予期せぬ他者の出現にアレンは驚いた様子もなくただ冷たい眼差しを相手に向けた。殺人現場に立ち会ってしまった不運である男は別段怯えることなくアレンを見定めるように見つめている。男の見た目からは到底予想もできない行動で、アレンは怪訝そうに男を見据えた。歳は二十代後半。優しい面持ちの細い男だった。アレンは元来そういった男が嫌いであり、またそんな男が自分の予期せぬ行動を取っている事実に苛立ちを感じていた。
しかしいくら経っても男はアレンを捕まえようとすることもなく、また警察に連絡することもなく、その場に立っているだけだった。
一体どういうことか、とアレンは訝しがったが遠くから聞こえてくるパトカーの音に気付き急いでその場を離れようとした。
この場にいればやがて警察が来て捕まるだけである。アレンの服にはべっとりと血痕が付着していてどうしたって言い逃れなどできない。アレンはこんなことで捕まる訳にはいかなかった。親友だと思っていた相手に手ひどく裏切られ辱めを受けさせられた。許せるはずがない。だから殺した。自分を裏切った当然の報いだとアレンは思った。神の元殺しは最大の罪であることは分かっていたがアレンは後悔などしなかった。





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