私立緑葉学園1
第1章
1
しくしくしく。
しくしく、しくしくしく。
……………。
しくしくしく。
五月蝿い。
「頭の上で泣いてくれんなよ!」
堪忍袋の緒が切れたとはこのことを言うのだろう。もう俺の限界は遠くの昔に過ぎていた。
俺は左右両方の耳を手で塞ぎ机に突っ伏した。だが頭上の気配はいつまで経っても消えない。
しくしくしく。
そもそも何で俺がこんな目に合わなきゃなんねえんだ。もう直ぐ試験なんだぞ!次、成績下がったらヤベえんだよ。殺されるっ。
俺の顔は一気に青く染まった。ほんとにヤバイ。こんなことしてる暇は無いのだ。だが上にはまだ女々しく泣いてるアレがいるのだ。
俺は腹を決めることにした。
このまま何もせず机に突っ伏していたところで現状は全く変わらないだろう。それならば。それならば、何かアクションを起こして相手の出方を窺ったほうが得策かもしれない。
そう自分に無理矢理言い聞かせ俺は上を見上げた。
「分かったから、お前の願いとやらちゃんと聞いてやるから!」
だから上で泣くのだけは止めてくれ。
そう続く筈だった。筈だったというのはやはり理由がある訳で、俺はこのときバッと眼を光らせて見てくるコイツに一抹の不安と後悔を覚えたのだった。
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