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私立緑葉学園1
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私が教師になろうと思ったのは、何れは自分のものになるであろう学園の現状を把握したかったからだった。
親が理事長を勤めているため違う学校を出身校としたので緑葉のことは全く知らなかったし親の勤務先だからといって興味も持たなかった。しかし成人して社会人の一員となると別で私は篠影の名を継がないといけなくなった。無知なままでは今まで勤めていてくれた教師や在校生にも失礼だろうと、父に頼み今年度から新人教師として緑葉に派遣された。





そして、今就任式に出席している訳だが………。
千人を超える人間を前にするとくるものがある。私も巨大校の出身だから千人もの人間と共に学校生活を送ってはいたが………壇上に上がりいざ挨拶をするとなるとまた違ってくる。それに何故か生徒たちが異様にざわめきあっている気がする。もしかしたらどこか変だったのだろうか。私は恥ずかしくなり、顔を染め早々と挨拶を終えパイプ椅子に戻った。何故か余計に周囲がざわめきだったが。

悲惨な就任式が終わり職員室に戻るとやけに周りの職員が私の周りに集まってきて機嫌とりを始めてきた。理事長の息子と公言したわけではないのに、もう知れ渡っているようだ。一瞬父を疑ったが私の名字を聞いて直ぐ息子と結びついたのかもしれない。篠影など並みにいる名字ではないし。

そういった媚びを売られるのは好きではなく私は彼らを適当にあしらって校長に挨拶をした。校長も私のことを知っていたようだったが、特に態度を変えずに接してきた。―――凄く好感が持てた。

クラス担任を受け持ったわけでは無いので、周りが続々と職員室を出ていくのを横目で見ながら私はこれからの教師生活で大半を過ごすであろう仕事場に赴くことにした。
校内はホームルーム中な為シンッと静まり返っていた。それは一階にある化学室も然りで人の気配が全くしない。
この度理系の教員免許を私が持っており、しかも丁度よく化学の教員が定年退職したことからすんなり化学教師として緑葉に来ることができたのだが………本音を言うと教師には向いていないと思う。





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あきゅろす。
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