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拍手お礼小話集





孤児院での生活は今までの生活と比べれば格段とよかった。毎日規則的に与えられる食事。入るときに、ちゃんとしっかりと焚けて温かいお風呂。
お母さんとの生活ではなかった。だけどみんな、おれを腫れ物扱いする。この姿が異様なんだ。金色の髪は真っ黒の髪の中では浮いていて、青い瞳は化け物みたいだって。
今までそんなこと言われなかったのにどうしてなんだろう。ご飯がなくても、前の生活の方がよかった。……帰りたい。
そんな孤児院の暮らしは直ぐに終わりを迎えた。

「今日から私が君のお父さんだ」

「お…とう……さん?」

呼びなれない単語に少し戸惑ったけれど、おれは初めての感覚に狂喜した。何度も疑問を抱いてきたのだ。どうしておれにお父さんはいないの?お母さんには聞けなかった。でもそんなお父さんがおれにも出来る!
おれは笑顔でお父さんの、赤羽 芳蔵さんの手を取った。






新しいお家になるところに連れて行ってもらうまでの車の中で、お父さんは昔自分はお母さんにお世話になったことがあって、おれを引き取ることにしたんだと教えてくれた。





屋敷に着いて車を降りた。
大きな家。
今まで見たこともないような大きさに、暫く口が開いたまま閉じなかった。そんなおれにお父さんは優しい笑顔を向けてくれていた。





外だけではなく、やはり中も凄かった。凄く凄く大きい。前を歩くお父さんについて行くとある部屋にやってきた。

そこには綺麗な女の人がいた。
着物を上手に着こなして、髪を後ろで束ねてる。

「私の妻の深妃だ。今日から君のお母さんということになる」

「お母さん……」

新しいお母さんを前に、小さく呟く。それはお母さんから発せられる雰囲気が決して温かいものではなかったからだ。冷たい刺すような雰囲気。

「私は一切認めておりませんわ!何故このような子を引き取るのですか。こんな……薄汚い娼婦の子を」

衝撃が走った。





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あきゅろす。
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