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短編
僕と教師の秘密事情2






ポロンポロンと、ピアノが誰もいない音楽室に何とも虚しい音色を奏でる。
僕は困憊した身体をピアノに凭れさせ、ぐったりと最近の騒動を振り返った。

ある日の登校中、クイーンテレシア唯一の若い男性教員である堂上先生に、生徒の前で“東山さんからのチョコが欲しいな”と大々的に言われたせいで、酷い目に遭った。

先生の発言は直ぐに全校に広がり、先生と僕が恋仲だという噂を助長させることになった。それにより噂が真実味を持ち始め、堂上先生の噂のお相手を見極めるため、僕のクラスに毎日の如く学年関係なく、生徒が押し掛ける事態となってしまった。
あまりここで目立ちたくない(男だとバレたら困るから)僕にとってこの状況は気が気でなく、神経をすり減らしていった。
ただでさえバレないよう神経を使っているというのに、こんなことになってしまい、余計に神経を使うようになってしまった。
堂上先生に糾弾してみても先生は“私の影響力もなかなかなものだね”などと他人事と笑って執り成してくれない。しかもそんな状況の中、聖歌祭ではクラスの代表として伴奏者に選ばれており、僕の気苦労は最高点にも達していた。

しかし漸く今日でその聖歌祭が終わり、伴奏者という重役から解放されたのだ。残念ながらグランプリは3年生のクラスで僕たちのクラスは入選だったけど、日々の練習が功を成したのか僕個人としては伴奏者賞を頂いた。
まあ毎日音楽室で現役の音楽教師に仕方がなく教えを乞いていたのだから不思議ではないのだけれど。まさに怪我の功名といったところか。

新任早々他の先生には見破られなかった僕の正体を、堂上先生は一発で見破ってしまった。僕の正体を内緒にしてくれる代わりに、放課後毎日音楽室に来ることを約束させられてしまった。そもそも僕たち2人がデキているなんていう噂があがったのはこの約束のせいなのだ。
毎日音楽室に来たところで、堂上先生と楽しくお喋りなんてするはずもなく(身の危険を感じるため)ついでだからとピアノを教えてもらっていただけなのに、他の生徒からは親密に見えてしまったらしい。本当に、ただピアノを教えてもらっただけだって言うのに。

しかしそれも昨日までの話。
聖歌祭が終わってしまえば、先生にピアノを教えてもらう必要はなくなる。でもだからといって、音楽室に来なくても良いという訳にはいかないのだけれど……。
先生の勤務期間、つまり終業式までの残り3週間はここに通わなくてはならない。







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