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短編
僕と教師の秘密事情






「「おはよう御座います、透お姉さま」」

「おはよう御座います」

クイーンテレシア女学院は外国に本部を置く、由緒正しきミッション系の学校だ。丈の長いワンピース型の制服に身を包み、日々学業に勤しむ生徒たちは何れもお金持ちのお嬢さまたちで、そんな僕もお金持ちという点では一緒である。ただ、一つだけ彼女たちと違う点と言えば……。

「おはよう、透くん。今日も男とは思えないほどかわいいわね」

「―――っ!」

耳元で直に囁かれた言葉。耳がちょっと弱い僕はすっかり顔を赤くさせて、振り返るとそこには宝木教員が白衣を身に纏い、悪戯心剥き出しで立っていた。

「せ、先生っ!だからそれは内緒だと……!」

「誰にも聞こえやしないわよ」

誰にも聞こえないよう、宝木先生にだけ告げると、先生は余裕な笑みを浮かべてきた。
そう、僕が彼女たちと唯一にして絶対違う点。それは、僕が“彼女”ではなく“彼”だということだ。
何故男である僕が女の格好をしてこんな所に通っているかというと、それは二年前に遡る。

僕の母さんは所謂玉の輿だった。生まれは庶民で、昔から金持ちの暮らしには憧れていたそうな。そんな母さんが高校生の時、入りたくて仕方がなかった高校、というのがこのクイーンテレシア女学院で、お金持ちになった今、自分の子どもにそこの制服を着せてあげたいとのことで無理矢理僕をここの学校に入学させた。
うん、確かにその気持ちは分かるよ。その子どもっていうのが女の子だったらね!僕は生まれてこの方ずっと男の子で、スカートを履いたことなんて一度だってない。
それだというのに、母さんは僕に何も相談なしに、この学校に入学させてしまった。

宝木先生は母さんの昔からの友人で、今回の件の協力者でもある。いくら僕が、かなり不本意だけど、女顔で見た目が騙せても身体的特徴は誤魔化せない。身体測定なんてしてしまったら一発でバレてしまう。そんなことにならないように、宝木先生がうまく取りなしてくれる。言わば唯一の僕の味方、だというのに、先生は僕を困らせて楽しんでいるような傾向がある。

「あら、透くん、急がなくては遅刻してしまうわよ」

左手に付けた腕時計を読み、宝木先生は僕の追及を逃れようとする。事実、始業時間まで余裕がある訳でもなく、僕は渋々この場を後にした。“女性たるもの、いかなるときでも走らず”が校則だ。







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