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短編
2人だけのパラダイス






「これは、凄いな……」

今は3月。
春先にも関わらず半袖の格好をしているのには訳がある。

「喜んでもらえたみたいだな」

こいつ、越後屋 司に連れてこられたここは、外国にある越後屋家所有の島だ。だから日本ではまだ肌寒くとも、ここはもう暖かい。
何故日本を離れ、遠い外国の島にいるかというと、それはひと月程前に遡る。





2月14日。
言わずと知れたバレンタインデーだ。
毎年、会社の女性社員から義理チョコを貰っていたくらいで、彼女もいない俺には何も関係がない行事だった。―――去年までは。
つまり、今年は事情がいつもと違った。

仕事帰り。
会社から帰ってきた俺を待っていたのは、かわいい女の子……ではなく、いまどき男子高校生司だった。

「和正、お帰り」

「お前……どうやって入ったんだ?」

ドッと肩に疲れが押し乗ってくるような気がする。仕事に行く前、確かに部屋の鍵を閉めたはずだ。

「まあいいんじゃん。ところでこれ」

全く良くない。何がまあいいじゃん、だ。セキュリティーに問題ありまくりじゃないか。大方、合い鍵でも何でも勝手に作ったのだろう。後でちゃんと没収しなくては。
そんなことを思っていると、目の前に紙切れが差し出された。仕方なく受け取って見てみると、それは二枚の航空券だった。そして、その宛先を見て驚いた。

「ってこれ……!」

「まあそこは経由するだけなんだけどさ。そっから自家用機で更に三時間」

訳が分からないっ!
寧ろ分かりたくないっ。

「ほら、それにこれ。どうせ和正のことだ。パスポートなんてもってねえだろ?」

司はさも当然かのように俺のパスポートを差し出してきた。一体!どうやって!!!
この際、馬鹿にされていることなど気にならない(まあ事実だしな)
何で!赤の他人であるお前が!赤の他人の俺のパスポートを無断で所得できるんだ!?

「3月12日から三泊四日で行くからそのつもりでな」

「三泊四日!?」

つまり、何だ。
しがないサラリーマンである俺に会社を4日も休めというつもりなのか!?そんなの、この忙しい時期に会社が許すはず……。

「もう和正の休暇届けも出しといたから心配すんなよ」

そうだった。こいつはこんなんでも、社長の息子だったのだ。





そんなこんなで1ヶ月後、俺と司は何の問題もなく無事に外国の海の空の下で羽を伸ばすこととなった。

「今日から3日間二人っきりだぜ」

綺麗なコバルトブルーな海に足を浸らせていると、後ろから司が気が滅入るようなことを言ってきた。
そう、ここは無人島で俺たちは二人っきりで……。つまり、この3日間、俺たちは自分で食事の用意やら掃除やらをしなくてはならないのだ!

「……普通気にする所はそこじゃねえんじゃねえの」

うるさいっ!
お坊っちゃんなお前のことだ。
どうせ全部俺がやらなくちゃならないに決まっている。それじゃあ全く羽が伸ばせないじゃないか!

「本当に二人しかいないのか?管理人さんとかはいないのか?」

「いないぜ。今日に合わせて休暇を与えておいた」

なんて余計なことを。

「……だって和正と二人っきりになりたかったんだ」

そっぽを向く司の頬が僅かに赤く染まっていた。
……っと、仕方ない奴だ。

だが、別にいつも会うときは二人っきりなんだから、ここまで来てわざわざ二人っきりにならなくてもいいんじゃないのか。
まあ、仕方ないか。
費用は全部、司持ちだからな。
文句なんて言える立場じゃない。
この島にいる間は、司の召使いにでも何でも呈してやろう。



司のエロく無茶なお願いに顔を青くさせることになるのはその数時間後のことだった。







おわり



――――――――――――
強制終了にも程がある。
まあそのおかげでサイト再開にまで企画を終わらせることができましたが。



20090910
(20090704 ブログ掲載)





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あきゅろす。
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