短編
年明け企画
本気の恋の恋愛事情
年明け企画
「最近やつれたよな、すぐる」
季節は巡り、春には満開の花を咲かしていた木も今じゃすっかり寂しい姿になった。そう季節は冬。草花が枯れ、冷たい氷で大地が覆われているようにおれの心も鬱屈な気分で満たされている。それもこれも半年前のあの事件のせいだ。
「旦那がアッチ激しいからかー」
どっと周りはこの声に笑い出す。人事だと思って、クラスの奴らみんなあることないこと言いやがって。おれが閻魔だったらこいつらみんな舌を抜いて地獄行きだ。みんな本気で言ってる訳じゃない、悪ふざけだって分かってるんだけどどうしても許せない。しかもネタが下品過ぎるし。
「旦那って言うな旦那って。お前らさーおれがあすかちゃん好きなの知ってんだろ」
半年前まで、おれのあすかちゃんへの思いは周知の事実だったけど今じゃそれに付け加えてアイツにアプローチを掛けられている男というのもプラスされている。
「まあまあ、あ、すぐる、旦那旦那」
まだ言うか!コイツ……ッ!!って今、旦那って……。
「すぐる!!」
視線を追うと教室の前のドアのところに恐らくおれを探しているだろうかざみの姿があった。かざみはおれの姿を見つけるやいなやまるで飼い主を見つけた犬のようにこちらにやってきた。
「帰ろうぜ、すぐる」
「……………」
嫌だ!!と言いたい。しかしかざみはおれに有無を言わさないよう腕を掴み帰ろうとする。困ったことにおれらに気付いた周りの外野がこちらに野次を飛ばしてきた。それも、ヒューヒューとか見せつけんなよっとか言う揶揄するものばかりだ。
「うっせー!黙りやがれっ!!」
かざみがおれに会いに来ると決まってくる野次馬には毎度困っている。コイツら人事だと思って本当になあ!!
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