現代
20
コンクールにエントリーできるのは学生限定。小学生から大学院生まで。
学生の中では、最も大きなコンクールとも言われているらしい。
題材は自由。特に決まりがなくて何でも良いらしい。それこそ、風景でも、建物でも、人物でも、何でもだ。
「よかったら、このカメラあげる」
美琴の部屋の中で最もコンパクトな一眼レフを手渡された。
まだ真新しく、新品のような輝きを誇っていた。
「それ、二年くらい前に出たデジタルの一眼レフ。持ち歩き簡単そうで買ったは良いけど、やっぱりデジタルは合わなかったの」
だからほとんど使っていない。そう言って、美琴は再びレンズを磨き始めた。
「こんな高いもの、貰えない」
「そう、じゃあ捨てて」
極端な返しに、俺は仕方なしに受け取ることにした。
高価なプレゼントを受け取って、部屋に戻ってきた俺を待ち受けていたのは、半裸でベッドに横たわって眠る自称宇宙人の姿だった。
「……なんて、格好しているんだよ」
黒いシーツに、自称宇宙人の白い肌が栄える。
いかに今が夏で、冷房のついていないこの部屋が暑いからって、こんな姿で寝ていたら風を引く。
「おい、そんな格好で寝ていたら風邪引くぞ」
揺さぶって起こそうとしても、なかなか自称宇宙人は起きる様子はなかった。
いや、正確に言うと起きてはいた。しかし服を着ようとはしなかった。
「暑い……」
「それは俺もだ」
この部屋にいるのならば我慢しろ。と冷たく突き放すが、それでも尚服を着る素振りも見せない。こいつ……梃子でも動かない気か。
それなら……と俺は先程美琴に貰ったカメラを取り出した。
カシャ。
「………なに?」
気怠げに目を開く自称宇宙人。その姿を俺はすかさず写真に収めた。
流石に半裸の姿を写真に撮られるのは恥ずかしいだろうと、自称宇宙人にレンズを向けたのだが、こちらのカメラに気付いても自称宇宙人は服を着ようとはしなかった。寧ろ、此方を挑発するように、目を反らさず一身に見据えてくる。
その自称宇宙人の姿は、まるで地上に降り立った天使のようだった。
黒のシーツを背景に、白い自称宇宙人が此方を一身に見詰めてくる。
俺はその魅力に、シャッターを押す手が止まることがなかった。
シャッターの音ともに、少しずつポーズを変えていく自称宇宙人。半裸の格好が、シーツの位置によって全裸の姿のようにも見えてくる。自称宇宙人の視線がレンズを通して、その奥にある俺の瞳を見透かしているような、そんな感覚にも陥ってきた。
そんなとき、不意に自称宇宙人が笑みを浮かべた。
それはまるで、見る者全てを虜にするような極上の笑みだった。
俺はシャッターを押しまくった。この一瞬を決して逃してはならない。そんな使命感に狩り立てられ、俺は自称宇宙人を撮り尽くした。
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