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現代
19




「あまりに重たかったから、蹴って逃げ出した」

「あ、そう」

何だろう、このガッカリしたようなホッとするような……。

「……それにしても、最近何故か異常に絡まれる気がする」

漸く自分の周りの変化に興味を持ってきたか、と俺は親心を持って自称宇宙人の成長を喜んだ。

「もしかしたら……」

今まで、自称宇宙人と恋沙汰は無縁の出来事だったが、もしかしたらこれによって自称宇宙人に春が到来するかもしれない。そうなったら、一体自称宇宙人はどうなるのだろうと怖いもの見たさに期待してしまう。

「もしかしたら、僕が宇宙人だと、周りに感付かれ始めているのかもしれない……」

「……………」

自称宇宙人に、それを期待した俺が愚かだった。

そんなこんなで、自称宇宙人は高校も二年になっても恋には無縁の生き物だった。
同じ年頃の男子生徒は盛りの着いた獣のように、思春期真っ只中だと言うのに、やはり自称宇宙人はどこか一人世俗離れしていた。

なんて、言う俺だが、一年の末に二人目の彼女ができていた。
今度の彼女は美琴といった。なかなか淡泊な性格で、いちゃいちゃでラブラブな甘い関係を期待するような、そんな子ではなかった。希美と同じで、やはりどこか普通の女の子とは違った雰囲気を持った女の子だった。女の子、と言うのも烏滸がましいかもしれない。美琴はアルバイト先で会った、俺よりも5つ年上の大学生だったのだから。

今年大学四年生の美琴は、やはり同い年の女の子から比べると随分大人な考えの持ち主だった。

「T大志望なんだから、勉強頑張らなきゃ。デートなんてしている暇ないね」

ニッコリと笑ってそう言うものだから、最初俺は恐怖に慄いた。しかしそれは美琴の本心だったようで、デートらしいデートをしなくても文句の一つも言わなかった。連絡はいつも俺の方からで、デートと言ってもお金のあまり掛からないようなことばかりだった。
彼女が大学生で、一人暮らしということもあって、ほとんどを彼女の部屋で過ごした。
美琴の部屋では、何をするでもなくまったり過ごすことが多かった。まるで俺が自称宇宙人になったようだった。

美琴と一緒にいると、とても楽だった。自然体のままで付き合える、そんな相手だった。

そんな訳で俺が美琴の部屋に入り浸るようになり、自称宇宙人と俺の部屋で過ごす時間は徐々に減ってきていた。

美琴は俺に色々なことを教えてくれた。
女性が好きな服装。言動。
デートで女性をリードする方法。
女性をベッドで喜ばせる方法。
そして―――写真。

「――――写真コンクール?」

「そう、毎年八月に行われる大きなコンクール。私は今年で最後」

美琴は大学で写真部に入っていた。高校の頃からずっと写真を撮っているようで、美琴の部屋には何台ものカメラと、何枚もの写真が飾られていた。美琴とのデートは近くの公園で写真と撮るといったことが多かった。

「そうだ、馨もエントリーする?」

今日も美琴の部屋で、美琴がレンズを磨いている姿を見ていたら、突然コンクールのことを教えられた。




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あきゅろす。
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