姫と執事の話
おてんば天使がふってきた!
天使だ。
その女の子をはじめて見たとき、俺は思ってしまったんだ。
幼い頃に見たあの絵のような天使は、本当にいたんだって……。
普段は城に居るばかりで一年に一度帰ってくるくらいの父から、城に来なさいと手紙が来た、と話しているときの母は、少しだけ寂しそうにしていたような気がする、とサンジェスは思った。
それが気になりはしたが、手紙の内容が“来てみないか”ではなく、“来なさい”だったので、行くことになった。
家を出発する前日に、友人たちと一日走りまわって遊んだため、馬車に乗ってすぐに眠りについてしまった。
少し乱暴に体を揺さぶる父の手と声に目を覚ます。
寝ぼけてぼーっとした頭でなんとか
「お久しぶりです。父さん」
と返すと、あきれたようにため息をつかれた。
「元気にしていたか」
「はい。母さんの方も変わりないですよ」
かんたんに母の近況を伝えると、父はほっと息をついたように見えた。
「それであの、今回俺が呼ばれた理由は……」
ひと呼吸おいてから声をかけると、またもあきれたような顔を向けられる。
「すぐにでも国王様にお会いするべきとは思うが、そんな寝ぼけ顔をお見せするわけにはいかないな」
と、城の廊下を歩きながら返された。
「時間になったら呼びに行く」
「……はい」
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!