姫と執事の話
4
数時間後。
汚れても良いように、少年風の服に着替えた姫が、リオンを庭に連れ出していた。
「さあリオン。約束だぞ」
「リーシャ姫。今日は人数を増やしてやってみませんか?」
「増やす?」
「はい。一人なんですけど、リーシャ姫と一緒に遊びたいってヤツがいて」
「誰なんだ? それは」
姫があたりに首をめぐらせる。
リオンが、それは、と口を開いたところで、
「わたしです! 姫っ!」
と小気味良い音をたてて二人へかけてくる者がいた。
姫は目を大きく見開き、口をポカンと開けた。
リオンは片頬をゆがめて、あきれたように笑う。
「アリア、お前はいつからメイドになったんだ?」
「正確に言えば、もう少し先です。これは少しだけ年上のメイドから貰ったんです。お下がりだったら汚れても大丈夫ですし」
メイド服に身をつつんだアリアは、胸を張るようにニッコリと笑った。
「わたしも仲間に入れてもらいたいんですが、よろしいでしょうか? 姫」
「……アリアもやるのか」
姫は、おそるおそるといった感じでたずねた。
「はい。鬼ごっこ――は、ともかく、かくれんぼには自信がありますよ。ヒマなときには城中探検してるんですから」
「……リオン」
今度はリオンをチラリと見上げると、
「もちろん良いですよ」
と言って笑った。
姫はおずおずとアリアを見上げてきた。
「それじゃあ、えーっと、アリアが得意だ、と言っていたかくれんぼにしようか」
「はい。もちろんオニはリオンさまですよね」
「そうだな。リオンがいい」
「え、オレのいけんは――」
「隠れられる範囲はどうしましょうか?」
「城の中すべて、というのはどうだ?」
「いいですよ」
「いや、オレが良くな――」
「時間は日が沈むまででどうでしょう? 何しろ、範囲が広いですから」
「いいぞ」
リオンの言葉をまるで無視して繰り広げられる二人ね会話に、アリアと一緒にいたセリカは思わずふき出してしまい口元を押さえた。
「頑張ってくださいね。リオン様」
「セリカまで……」
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