姫と執事の話
2
サンジェスは足音も荒く廊下を進んでいた。
手には、リーシャから貰った物が形を崩さないようそっと握られている。
たしかアリアは今、城中の花に水を遣っている頃のはず。
そう思いながら歩いていると、案の定、鼻唄まじりに水遣りをしている姿を見つけた。
「あら、サンジェス。何かご用?」
「アリア……姫に変なことを吹き込むのは止めろ」
アリアが、なんのことかしら? と返すと、ズイと箱を突き出した。
「これを見てもまだ言うか」
「あら。――ん。おいしい! 中のジャムが良い感じね。さすが姫」
「いや、たしかに美味かったが――ってそうじゃない!!」
「“最上級の惚れ薬”ってやつ? よく言うじゃない。“チョコは媚薬(びやく)”って。――あながちウソでもないみたいね」
「どういうことだ?」
アリアはフフフッと笑いながら、サンジェスに背を向けて歩き出した。
「サンジェス。アナタ、鏡を見た方がイイわよ」
《END》
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