姫と執事の話 3 翌朝。 ウィンドベル側で用意した馬車にジルカとレイを乗せて、ジラフ公国に向かうのを見送った。 馬の駆(か)ける音が小さくなってきた頃、リーシャはまぶたのおちかかっている顔をアリアに向けた。 「アリア、朝食はもう一眠りしてからでいいか?」 「はい。大丈夫ですよ。昨日のうちに国王様には伝えてありますし、お目覚めになる頃にお持ちいたしますね」 「そうしてもらえると助かる。で、そのあとの予定はなんであった?」 答えたのはサンジェスだ。 「教師が来ることになっています。昨日は一つも進まなかったので、今日は少し量が多くなるそうです」 リーシャはそれにコクンと頷くと、“アリアだけ”を連れて自室へ戻った。 その間二人は、会話するどころか、一度も目を合わせていない。 アリアはチラリと後ろを見たが、サンジェスの態度はリーシャに気をつかっているのか歩みを遅くしてはいるが、いつもと変わらなかった。 「姫。お食事、全然減っていませんよ」 アリアも一緒に食べよう、と言われ一緒の食卓についたのだが、リーシャはパンを一つ食べたきり、全く手を動かそうとしなかった。 「あぁ……すまない」 声をかけられてようやっとスープを口にする。 「どこか調子でもお悪いんですか……?」 「いや……どうもあまりお腹がすいていないみたいだ……」 「ではわたしが残り、食べてもよろしいですか? 今とってもお腹がすいているんですよー」 「たのむ……」 それから、せめて、というようにミルクに手をのばした。 「なぁ、アリア。サンジェスが……」 「サンジェスさまがなにか?」 「……いや。なんでもない」 [*前へ][次へ#] [戻る] |