姫と執事の話
夏の暑さと眠り姫
夏。
比較的涼しいと言われているウィンドベル王国も、この日はやけに暑かった。
さすがのサンジェスも、ワイシャツの首もとのボタンを外していた。
(こんな日は、出来ることなら部屋でジッとしていたものだな)
そんなことを思いながら、王女リーシャの部屋を目指していた。
朝食の席で、リーシャがたまにはサンジェスやアリアとおやつが食べたい、と言ったので、その時間がちかづき、庭に面した位置にあるテラスへ向かっていた。
「あ、サンジェス」
ちょうど良いところに、とアリアが廊下の向こうから駆けてきて、一瞬眉をひそめた。
アリアに話しかけられるたびに嫌な予感が頭をよぎるのは、もはやクセになりつつある。
サンジェスのもとまで来ると、パタパタと服の胸元で風を送った。
チラチラと中が見えていたが、気にしないことにした。
「なにか用なのか」
「あ、そうそう。姫を呼んできてくれないかしら。そろそろおやつの時間なのに来る様子が全然なくて」
「なぜ俺が」
「べつにイイでしょ。それに、わたしはまだすることがあるの」
それじゃあお願いねぇ、と言って、アリアはテラスに向かって“ゆっくり”と歩き出した。
逃げたな、とは思ったが、ここで言い争っても余計に暑くなるだけだと思い、諦(あきら)めてリーシャの迎えに行くことにしたのだった。
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