[携帯モード] [URL送信]

姫と執事の話
夏の暑さと眠り姫
 夏。

 比較的涼しいと言われているウィンドベル王国も、この日はやけに暑かった。

 さすがのサンジェスも、ワイシャツの首もとのボタンを外していた。


(こんな日は、出来ることなら部屋でジッとしていたものだな)


 そんなことを思いながら、王女リーシャの部屋を目指していた。


 朝食の席で、リーシャがたまにはサンジェスやアリアとおやつが食べたい、と言ったので、その時間がちかづき、庭に面した位置にあるテラスへ向かっていた。


「あ、サンジェス」


 ちょうど良いところに、とアリアが廊下の向こうから駆けてきて、一瞬眉をひそめた。

 アリアに話しかけられるたびに嫌な予感が頭をよぎるのは、もはやクセになりつつある。

 サンジェスのもとまで来ると、パタパタと服の胸元で風を送った。

 チラチラと中が見えていたが、気にしないことにした。


「なにか用なのか」

「あ、そうそう。姫を呼んできてくれないかしら。そろそろおやつの時間なのに来る様子が全然なくて」

「なぜ俺が」

「べつにイイでしょ。それに、わたしはまだすることがあるの」


 それじゃあお願いねぇ、と言って、アリアはテラスに向かって“ゆっくり”と歩き出した。

 逃げたな、とは思ったが、ここで言い争っても余計に暑くなるだけだと思い、諦(あきら)めてリーシャの迎えに行くことにしたのだった。



[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!