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“Trick or Treat”なカップル事情
 それは、十月三十一日の昼休み。

 氷帝学園中等部、二年生教室前の廊下での出来事。



「わーかっしー!」


 教室から出てきた日吉若は、自分の名前を呼ぶその声を聞く前にその存在に気が付いていた。

 頬が緩まないように気を付けながら振り返ると、彼女である向日つばさが手を出していた。

 どういうことなのだろう、と対応に困っていると、


「トリックオアトリート!」


 と叫んで、つばさは笑みをこくした。


(なるほどな)


 そういえば今日はハロウィンだったと思い出す。


「お菓子ちょーだい!」

「ありませんよ」


 と答えれば、そーなの? と肩を落とした。


「なーんだ。ケチ」


 肩を落としたまま帰ろうとするつばさに、慌てて手を掴んで引き止める。


「なに帰ろうとしてるんですか?」

「だってお菓子無いんでしょ? ――そんなヤツに用はない!」

「Trick or Treat」

「?」

「お菓子無いんですよ。――イタズラ、してくれないんですか?」

「なんで若にイタズラしなきゃならないの?」


 つばさは、本気で首を傾げているようだ。


「…………」


 “トリックオアトリート”

 それは、お菓子が貰える魔法の呪文。




《END》

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