版権作品
3
そんな感じで練習が中断されて騒いでいるところに、
「もう、何か騒がしいと思ったら……やっぱりサボってるじゃない」
うわさの“華澄先生”が顔をのぞかせた。
すかさず高橋が華澄の元へ進み出る。
「すみません。浅葱先輩が来てくれたんで、つい……」
「え……?」
そのときはじめて、一馬は彼女と目が合った。
「どうも」
「え……今日用事があるって」
「思ったよりも早く終わって時間が空いたからさ、その――」
「先生に会いに来たそうです!!」
大きく片手をあげた伊藤が答える。
とたんに一馬は真っ赤になってしまい、あわててそっぽを向いた。
コホン、と咳払いをする。
「えっと、その……まぁ、そういうこと」
「そう。仕事、あと一時間くらいかかりそうなんだけど、もし大丈夫なら車で待っててもらえるかな」
「わかった」
とそばまで行くと、ポケットから取り出した車のキーを手渡される。
「じゃあ……残りもがんばって」
「ええ。ありがとう」
渡された瞬間に、ほんのすこしだけ手をにぎると、にっこりした笑みを返された。
手が離れると、華澄は改めて教室内を見回し、
「あなたたちも、もう帰りなさい。この様子じゃ、今日はもうまともな練習にならないでしょうし」
と高橋に目を向ける。
「それじゃあ、今日はここまでにします。お疲れ様でした」
高橋に続いて部員たちが華澄に、お疲れ様でした、と一礼した。
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