版権作品
2
カランカラン、と音をたてて扉が開き、榊野(さかきの)学園の制服に身を包んだ少女が駆け込んで来た。
「桂!」
ガタンと立ち上がった誠が、嬉しそうに声をうわずらせた。
言葉は、肩を上下させながら、
「すみませんっ。遅れてしまって……」
と、息を整えた。
誠が、大丈夫? と顔を覗き込むと、はいっ、と笑顔になった。
「遅れたことは気にしなくて良いよ。泰介(たいすけ)のヤツに捕まっちゃってさ、オレも今さっき来たところだったんだ」
誠は優しげに微笑むと、はい、と手を差し出した。
「さっ。行こっか」
「はいっ」
二人が店を出て行くと、へぇー、と光は口元をゆがめた。
「“今さっき来たとこだったんだ”だって」
側に居た七海が、時計を見る。
「かれこれ三十分は待ってたよな」
「まことお兄ちゃんカッコイイー!!」
カウンターからひょっこりと顔を出した心がほんのり頬を染めて、扉を見る。
「せかい〜。どーすんのぉ?」
「――っ。ちょっと買い出し行ってくる!!」
「あっせかいお姉ちゃん! こころもいっしょに行くー!」
慌ただしく出て行った二人を、
「いってらさーい」
光と七海はヒラヒラと手を振って見送った。
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