さがす明日
ネズミの息
授業が終わると、私は早速図書館へ向かった。
誰かに名前を呼ばれた気がしたが「ごめんね、急いでるんだ」と言って駆け出した。
現実に帰れば、ここの人達ともおさらばなのだ。
私は走った。何か手がかりが掴めるかもしれない。
図書館へ着くと、それらしい本を片っ端から開いていく。忍具、忍術、口寄せ…、暗号文もあり、解読できない物もあった。
暗号といえば……よくアプリで脱出ゲームやったとき全滅だったな。
数秒目を閉じる。諦めちゃだめだ。
私は読書を再開させる。
どうやら禁術にあてはまるらしく、時空間忍術の類いは見付けられなかった。
でも、時空間忍術や空間移動系の忍術ではなくても、今のうちに忍術の修行をしておくにこしたことはない。基礎すら知らない私だ。封印術や口寄せ、幻術などの本にも目を通し、一部こっそりメモをとった。
家へ帰ると、荷物を置いて森へ向かう。
まず、チャクラをコントロールできるようにしなければ。
辺りを見渡して太めの木を見つける。
何度か木の側面に足を掛けるが、手を使わず垂直に登れる気がしない。落ちる恐怖心もあった。
先程の本とアニメの知識を思いだし、目を閉じてチャクラを足に集中させる。一定のチャクラの流れをイメージする。
目を瞑ったまま、私は歩く。
すると重力のかかり方が変わっていくのを感じ、ハラリとおさげが肩から滑るのが分かった。目をゆっくりと開けた。
目の前に木の枝と葉っぱたちが飛び込んできて、驚いて瞬きをする。
後ろを向くと遠くなった地面が私を見上げていた。
「あ」
気を抜いた。正しく重力に従って落下する。
ドサッ!!と、落下音が静かな森に響く。かろうじて腕で庇い顔面直撃を免れるが、グキリと右腕から不穏な音も聞こえた。
「うぐ……」
起き上がる瞬間、利き手が右だけに、いつもの感覚で右手を不用意に動かしてしまった。鈍くも鋭い痛みが走る。これ、折れたんじゃ?
右腕を庇いながらやっとのことで立ち上がる。
「はぁ…」
もう夜だ。これからもっと暗くなる。私は木にもたれ掛かり、ずるずると座り込んだ。
「明日、休もうかな」
腕の痛みに加えて、疲れがじわじわと四肢を支配していく。
空を見上げると、電気の少ないこの里では、星がよく見えた。
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