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さがす明日
移住


里の補助金で衣食住が保証され空き部屋で一人暮らし。その代わり、忍者学校で優秀な成績を修め、忍となり木の葉の里の為に尽くすこと。

あれからすぐ退院した私は、火影邸にてそんな話の運びとなり、私の答えは「あの(弱いけど)、ええと(怖いんだけど)、その(私にできるの?)、よろしくお願いいたします……」だった。
心の声をよく出さなかったと褒め称えてほしい。

アカデミーでは転入生という扱いになるようだ。

与えられた住居に地図を頼りにたどり着き、借り部屋で考え事にふける。
ここがNARUTOの世界だということに気が付いた。人気の漫画で友達に進められてアニメを見て多少のことは知っていた。

どういう経緯で、ここに来てしまったのだろう。
ベッドの上で横になる。自室とは違う木の匂いがした。
森の中で二度寝しなければ良かった。
私って、何してたっけ…。


「オイオイヨー」

「!」

いつの間にか周囲の風景が消え、真っ白な空間に居た。そして、自分以外の声が気のせいではないことを、振り返って再確認する。

「やっと話せたね」

ニコニコと笑みを浮かべていたのは、十歳以下になってしまった私と同じ背丈の男の子。紫色のカッパのようなコートを身につけ、フードからはヘーゼル色の髪と瞳に、あどけない表情がのぞいていた。
紫色のコートは、背丈に合っていない様で手や足は隠れていた。

「さっきも言ったけど、ぼくはイオド。」

「え」

脈絡がない。あ、そっか。ゆめ、だから。

「夢じゃないよ。アサヒ」

イオド。そう名乗った彼の口が三日月のようにつり上がった。イオドは、可笑しそうに目を細めて、垂れ下がった袖を口元に当てて嗤った。







雀の鳴く声が聞こえた。涼しい風が入ってくる。目を覚まし、のっそりと起き上がり窓を閉める。涼しい方が寝やすく窓は換気のために開けて寝ていたが、知らないうちに風邪を引くかもしれないので閉めておいたほうがいいかもしれないな、と思った。

私は無事、アカデミーに転入することができた。
とはいっても、中身の年齢が年齢だけに、幼い生徒との関わりに自然と馴染めるわけもなく、私は他人と関わらず一人で居ようと決めていた。

「アサヒです。よろしくお願いします」

職員室でイルカ先生に挨拶したときと同様に、クラスでの適当な自己紹介も、事務的なものになってしまった。無表情が板についてしまっている。

「…えはは」
不器用な愛想笑いを後付けする。
たださえ、深刻な状況なので、笑えなかった。

たしかこれくらいの年齢の子なら、感情が先に出やすいのだったかな。

「じゃあ、アサヒちゃんは、空いてる席に座ってね。」

「はい」

ちらりと見えた金髪や一方的に知っている顔を流し目で見て、一番後ろの席に座った。

「それでは、今日の授業を始めます」

イルカ先生の声を聞きながら、私は教科書を出して授業に意識を集中させた。






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