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文科省の支援、女性研究者の採用率伸びず

【科学】文科省の支援、掛け声倒れ…女性研究者の採用率伸びず

文部科学省は、女性研究者の支援に力を入れているが、研究現場に占める女性の割合はあまり増えていない。
狙った成果があがっていないのは、なぜか。
東京農工大学の大津直子助教(34)は、植物の生育に欠かせない硫黄が、化合物から供給される仕組みの
解明に挑む。植物から遺伝子などを取り出す作業には細心の注意が必要で、時間もかかる。だが、2人の
子供を保育園に迎えに行くため、研究室にいられるのは午後5時まで。週2回訪れる研究支援員に、データ
整理や実験の手伝いを頼んでいる。
文科省は今年度、理学、工学、農学の3分野で、女性研究者の人件費や研究費を補助する事業を始めた。
農工大など5大学で支援対象となる研究者が公募され、選ばれた大津さんは、昨年10月に着任した。

新事業実施の背景には、第3期科学技術基本計画(2006〜10年度)に記された女性研究者採用目標に、
保健系を除く3分野で到達していない現状がある。研究者に占める女性比率も、05年度の11・9%から
13・0%に上がったものの、先進国では最低レベルだ。
大津さんは、理化学研究所で3年任期の研究職に就いていたが、「育児しながら短期間で結果を出すのは
厳しい」と感じていた。任期がなく、博士の支援員がつく仕組みは心強いという。
九州大学には170人の女性が応募し、10人を採用。研究戦略企画室の上瀧(じょうたき)恵里子准教授は
「大学院工学研究院は、女性准教授が1人いるだけだったが、教授2人、准教授2人になった。雰囲気も学生に
与える影響も変わる」と期待する。
ただ、5大学で教授を採用したのは九大だけで、多かったのは助教。京都大学は性別不問で公募を行ったため
か、女性8人の採用を予定していたのに、2人にとどまっている。
女性研究者を優遇することに、昨年の行政刷新会議の「事業仕分け」で批判も出た。中村桂子JT生命誌
研究館長は「女性の数だけを問題にし、お金で誘導するのはおかしい。女性が働き続けるのに必要な現場の
要望を聞き、特に出産・育児期の支援を柔軟に整備することが重要だ」と言う。
しかし、環境が整えば自然に女性が増えるわけでもなさそうだ。育児支援を中心とした文科省の環境整備
事業に、45大学・研究機関が参加したが、3年間の事業期間を終えた10大学の女性教員数の伸びは約15%。
全大学平均の約12%と比べて少し高い程度だ。
「育児との両立に悩んで辞める例が減り、育児休暇取得者や2人目を出産する人も出始めた」(田中真美・東北
大学教授)と一定の効果は認められるものの、「人事を行う学部など各部局の教授会は男性が圧倒的多数を
占め、女性を積極採用しようという意識にならない」(都河明子・東京大学男女共同参画オフィス特任教授)との
指摘も多い。
早稲田大学は、部局に事業の趣旨が浸透せず、体制作りが進まなかったとして、事業を終えた10大学でただ
1校、文科省から最低の「C」評価を受けた。棚村政行・早大女性研究者支援総合研究所所長は、「大規模な
大学は縦割りで、人事権も部局にある。女性を採ると予算が増えるなどのメリットを与えないと、意識は
変わらず、女性比率も上がりにくい」と悩む。
農工大のように博士号を持つ支援員を紹介できるのは、
首都圏の大学・研究機関に限られる。地方では、ハロー
ワークや口コミで適任者を探しても、なかなか見つからない。
国の補助が終わった後、大学が独自の予算で支援や環境整備を続けられるのか。課題はつきない。
物理学の賞を女性が受賞できるかは、審査委員の性別にも影響されるとの報告が、昨年6月、米物理学会誌に
掲載された。1997年〜2009年に同学会が賞(男女共通)を授与した464人と、審査委員会の構成を調べた
もの。女性の受賞率は委員全員が男性の場合3・3%で、女性委員が1人でも入ると5・6%に上がった。審査
委員長が男性の場合は3・6%で、女性委員長では9・5%だった。
英国のある生態学論文誌は、01年に投稿者を匿名にし、性別を明かさずに専門家に査読してもらう仕組みに変えた。

97〜2000年に女性の論文が採用される割合は23・7%だったのに、02年〜05年には31・6%に
上昇したという。
ソース

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