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stage16 囚われの ナリー

一体、これはどういう事だ。



ルルーシュは部屋の様子に愕然とした。


スザクが夕食に来ることを伝えておこうと思ったら、聞いて喜んでくれるはずのナナリーがいない。

今日の授業は二限目から、と言っていたから、まだここ、クラブハウス内のランペルージ兄妹の部屋にいる筈なのに。


からっぽの二人の家、ナナリーの代わりにテーブルに置かれているのは、紫、黒、灰色などの、陰湿な色の折り鶴。

その囲いの中にあるものは、



「ナナリー……!」



――口を塞がれ縛られた妹の写真。

幾重にもくい込む縄と口元のガムテープが痛々しい。

ナナリーに何て事を、一体誰が……!?


混乱が、沸き上がる怒りでぐずぐず煮立つのを、ルルーシュは感じた。
顔が憤懣にひどく歪む。



と、そこに携帯の着信音が鳴り響いた。



「はい……」

「お兄様!?」

「ナナリー!」聞こえてきたのは愛しい妹の声、ルルーシュの心臓をぎゅうと締め付ける。


「今、どこにいるんだ」

「わからないんです、ただ、ここから動くなって……あっ」

「ナナリー!」

「僕だよ、ルルぅ〜」

「! まさか」


一瞬の間をおいて、今度はやたら鼻につく声音の男が電話に出てきた。


「油断したねぇルルーシュ、僕が死んだと思ってたぁ?」


そんな馬鹿なお前が生きているはずがない、だがその人をどこまでも喰ったような口調、すぐに思い当たる奴はいる。
しかもただ一人。
奴しかいない。そいつは、


「待てマオ……! 今c.c.はここにいない」



――マオ。それはもう一人のギアス能力者。
心を読むギアスで、父を殺されたシャーリーをけしかけてルルーシュに銃口を向けさせた男。
契約していたc.c.を奪おうとするも失敗し、ルルーシュの策で警察の一斉射撃を喰らわせてやったはず、もう片づいたと思っていたのだが。


「だから来たんだよ。ギアスの効かない相手はやっかいだからねぇ。そっちの件は後回し。君にこの前の御礼をしないと、僕はもう収まらないんだ」


まずい。


痛い程の危機感がルルーシュに走る。


手に入れたいがためとは言え、好意を持っていたc.c.にさえ銃を撃ちチェーンソーまで持ち出した狂った奴だ。
その目的が完全にルルーシュと、そしてナナリーに移ってしまったのなら、危険極まりない。



「当然500メートル以内にいるんだろうな」

「そういうこと。探してみるかい?」

「……チィッ!」


ルルーシュは弾かれたように身を翻した。



「タイムリミットは五時間。
あは……それと、これは僕と君のゲームなんだから、警察のコマを使うのはNGだよ。この前みたいに打たれるのは嫌だから……」


ナナリー。どこだナナリー!?


携帯をインカムのように耳に取り付け、マオが長ったらしく喋るのを聞きながら、ルルーシュはあてもなく走る。
授業が既に始まっているのも忘れ、悲痛な思いで探し回る。駆けめぐる。


「でもさぁ、すごいよねぇブリタニアの医学って。おかげで……!」


ヒャッヒャッヒャッ、と癪に障る笑い声。
ルルーシュは今すぐにでも殴り倒してやりたい衝動に駆られたが、あいにく相手の姿が見えないのでどうしようもない。

周囲には人っ子一人居ない。



「ねぇルル、あの時のギアスは『撃て』じゃなくて『殺せ』とするべきだったんだよ……爪が甘いから妹が……!
窮地に立ったね、危地に陥ったね、ピンチだねぇ〜」

「まて、ナナリーは関係ない!」

「……」


そう訴えるも会話はあっさり切られてしまう。

一方的に終わらせられ残った電話の音が、じくじくと耳の中で疼いた。



「くそっ、マオめっ……! ナナリーにまで危害を加えるなんて……! 趣味の悪い野郎がッ!」


悪態をつきながら廊下の角を曲がると、危うくぶつかる所だった、足を止める。

授業中であるにもかかわらず突然現れた人の姿にルルーシュは肝を潰した。



一体誰だ。急いでいるのに。

もうこんな時間だろうが、授業ぐらいちゃんと出ろ。


自分のことを棚に上げ、苛立ちをぶつけてしまいそうになったが、よく見てみると、床にへたり込んでいるその人物はこちらに背を向けたまま動かない。

あれ、こいつは……と思ってルルーシュはゆっくりと回り込む、顔を覗き込む。


「……ナマエ」



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あきゅろす。
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