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stage13 アンウン
出撃しようとするコーネリアを呼び止めるた若い女の声。

不意に見上げると、何かの黒い影が跳んでいた、いや、グロースターの頭上を越えて、飛び掛かっていった。
コーネリアの針路とは反対方向の、崩れた家屋の影に飛び込んだのは、一台のサザーランド。
着地の瞬間鈍い音がして土埃が煙る。
何事かと驚いて、見ると、そのサザーランドの長槍が、一台の敵機体を捕らえていたのだった。
背中から倒れた敵に槍が深々突とき立てられている。あたかも標本の蝶をピンで留めよたように。
ただ、貫かれたのはコクピットがある胸部ではなく、腰部であるようなので、パイロットは磔にならずに済んだであろうが。

通信から先程の女の声が聞こえてくる。


「申し訳ありません、出過ぎた真似をいたしました。この機体が、コーネリア様を影から狙っておりましたもので」

「いや……よい。私も全く気付かなかった」

「それで、今槍の下にいる機体ですが、見たところ、頭部の形状から、ゼロの無頼ではないかと思われます」

「……ほう、あいつもまた、わざわざナイトメアで出て来てくれていたのか……ご苦労なことだ」

「コーネリア様、万が一に備え、こちらに来て退路と救援を抑えていただけませんか? 今は、動けないので……」

「いいだろう、今行く。よくやったぞ。これでゼロも年貢の納め時だ」

「ありがとうございます」


この部隊に、ギルフォードもなかなか見所のあるパイロットを選んだものだ、と感心しながらコーネリアは方向を変える。
サザーランドでグロースターの頭上を越えて跳躍するとは、なかなか高い技術を持っている。
ギルフォード達の囲いから、コーネリアが飛び出して行った距離は、大分あったので、助走をつけるにしては充分だったであろうが。
だがこのサザーランドのパイロットはそんな遠くからも敵を見抜き、かつ正確に敵をぶち抜いて見せた。

しかも、コーネリアと同じ女らしい。
さらに声にはぴんと張った若さが見え隠れしていたように思われる、まるで少女のような。
何と腕の立つ。男顔負けではないか。
そんな若い女軍人がいたとは、――気付きもしなかった。



――女?



急に、コーネリアの中に違和感がまた沸いて出る。
しかも今度は何よりも、強烈に、鮮烈に。
我が部隊に、女なんていただろうか?
純潔派も特派と同じく、今回は連れて来ていない。


「――お前――誰だ?」


思わずコーネリアは寝言のように呟いた。
味方機である筈のサザーランドに、そんな間抜けな質問あるだろうか、いや、でもまさか。
しかし、時既に遅く、そんな疑問を持った時には件のサザーランドはもう目と鼻の先。
サザーランドの女は答えない。

そして轟音が、風を押し戻し木々を唸らせ地を這って迫りつつあったのである。
――ドドドドドドド、と鉄砲水が、あっという間に辺り一面に覆いかぶさり戦場を激しく揺るがした。



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