黄昏に舞う紅
「…」
穏やか雰囲気に、二つの殺気が雑じる。
もみじを手で弄び、気づいていないふりをして相手の様子を窺う。
「 」
殺す気満々…、といったところだろうか。
溜息を漏らし、手にしていたもみじをシキの手にそっと握らせる。
「少し、待っててくれ」
小さく告げて、構える準備をする。
その時――…、近くの茂みが派手な音を立てて揺れ、その中から一人の男が飛び出してきた。
もう一人も、違う茂みから飛び出してこちらに向かってくる。
「死ねェェエ!!」
狂ったように喚く男の言葉を無視して、背にあった刀――シキの刀を抜刀する。
途端に男とアキラの剣が火花を散らし、あたりに高い金属音が響く。
「…ぐっ」
男が突っ込めば、それをアキラはするりとかわし、玩ぶように時折剣を交える。
いくら二人相手であっても、弱ければ一人分にも及ぶか及ばないかの力だ。
剣を交えた男の眉が寄せられる。
「…もう終わりか?」
呟くように言って冷笑を浮かべれば、男は額に汗を滲ませ、慌てたように後ろへ退いた。
後方で援護をしていた男と並び、タイミングを見計らって同時に飛び込んでくる。
「…」
二つの剣がアキラを刺すその前に、アキラは刀をしなやかに滑らせ、一人の男の脇腹へと突き刺す。
瞬間、あたりに鮮血が飛び散る。
男は痛みに悲鳴をあげて、血を止めようと必死で傷口に手を当てた。
止め処なく滴る赤い液体が、男のまわりに鮮やかな円を描くかのように広がっていく。
「ぐっ…あ゙ぁッ!」
ついた血を払うように、アキラは刀を軽く振ってみせる。
「まだやるのか?」
ある程度血が飛んだところで刀を鞘に収める。
哀れな姿で痛みに悶える男に、冷やかな視線を送る。
「ゔ…っ、ぁ」
斬られていない方の男がやっとのことで動き、アキラを警戒しつつ男の様子を確認する。
「…、…」
「…ぐっ…う」
死なない程度に切り捨てたのだが、思った以上に出血が多い。これ以上ほおって置くのは危険だろう。
男もそれは理解したのか、こちらを睨みながらもう一人の腕を肩に乗せ、後ずさっていく。
「…ッ」
あの程度の者を殺すことは容易だが、アキラは決してそうしない。
また狙われるかも知れないが、これに懲りて暫く手を出してくるような真似はしないだろう。
男はアキラとシキを交互に睨み、そして茂みの奥からどこかへと消えていった。
二人の気配が完全に消えたことを確認してようやく、アキラは身体の力を抜いた。
返り血を浴びた頬を拭って、シキを見やる。
シキには血の一滴すらついていない。
「大丈夫…だな」
ほっと息をついて、車椅子を押して帰路へと足を向けた。
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2009/2/3
ツッコミ所が結構ある気がする←
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