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novel(ma)
日常的出来事(アニシナ+グウェン)
「グウェンダル!」
平和なはずのヴォルテール城内に、突如として響き渡る声。

ああ、また来た。

そう思ったときにはもう遅く、幼なじみの赤い悪魔は彼の自室近くの廊下を闊歩していた。
時、既に遅し。
そんな言葉が彼の頭をよぎったかどうかは定かではないが、とにかくフォンヴォルテール卿は焦っていた。


何処に隠れようか。
机の下やクローゼットの中などは却下。
理由は簡単。
前に隠れた事があるから。
もう一つの考えとして、即刻この場から退散しようかとも思ったが、もう既に毒女は自室の扉付近にいる。
鉢合わせする可能性も否めないのでこの案も却下。

隠れる、逃げるという手段を奪われた彼にとって、選ぶべき道はただ一つ…

「グウェンダル!さあ観念して出て来なさ…おや?珍しい、逃げも隠れもしていないなんて」

大人しくもにたあになる事だ。

「逃げても隠れても、結局はお前の実験に付き合わされる。ならば、最初からこうして堂々としていたほうがいいだろう。」

眉間に皺を寄せ、そう言うと、目の前の彼女は満足げに笑ってこう言った。

「それは良い心掛けですね。あなたがどんなに逃げようが、どんなに隠れようが、体力の無駄以外の何物でもありません。なぜなら…」

あとはもう、何度聞いたか分からないお決まりの台詞。

「毒女アニシナの辞書に不可能という文字は無いのですから!!」

生きているうちに、あと何度この台詞を聞くのだろうか。
そんな事を頭の隅で考えながら、毒女に急かされつつ自室を後にするフォンヴォルテール卿グウェンダルなのであった。



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あきゅろす。
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