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僕の初恋の初恋。
それは突然で、強引だった(1)


僕は今。
「神崎」と書かれた表札を前に佇(たたず)む二階建ての一軒家の前で呆然と立ち尽くしている。
何がどうなってこうなったかは、未だ不明。
わかっていることは、一つだけ。



「さっきから何突っ立ってんの?早く入りなよ」
「っ・・・」
躊躇(ちゅうちょ)し続ける僕に、無表情で彼が歩み寄ってきて耳元で囁(ささや)く。



11年間、ずっと、ずっと見てきたあの手、あの指先が今。
僕の目の前で伸ばされて、そっと唇に触れる。
瞬(まばた)きすらも許さないその視線に、胸が痛いくらいにきつく締め付けられた。

あまりの緊張のせいか、身体のあちこちが言うことを聞かない。特に頭。
考えてみればここ数日、頭にモヤがかかったみたいになっててよくわからない。

猛烈な腹痛に、目眩(めまい)と少しの吐き気。
尋常じゃない。
あぁ、もう帰りたいよ・・・。



玄関を上がると、案の定。
客を迎える家の人は誰もいない。
これはほんとヤバイ、ヤバイって。

早く帰らないと─────

「部屋、階段上がって右行ったとこだから」

あぁ、・・・終わった。
こんなだから僕はダメなんだ。
いつも、こんなだから・・・。

「お菓子持ってくねぇ。あ、そうだ、炭酸あるけど飲む?確かグレープとオレンジと、あと〜」
「み、水でいい・・・です」

冷蔵庫の中を覗(のぞ)き込むその顔が、じっと僕を見据(みす)えた。
一瞬静まり返った空間の中、彼が無表情に呟(つぶや)く。

「さっきまでとなんか違うね。まっ、いいんだけどさ」
「・・・?」

い、今のは・・・何なんだ?えっ、さっきっていつのこと?それに違うって何が?めちゃめちゃ普通だったじゃん。っていうか、僕一言も言ってないし。えっ、水のこと・・・?

階段を一段一段と上がっていくうちに、少しずつ記憶の破片が集まってきた。

結論から言うと、多分こうだ。
屋上での件を言われたくない彼と言いたくて堪(たま)らない僕。ようやく言えたかと思いきやスルー。あまりに予想外の展開に、数日間憂鬱(ゆううつ)に浸(ひた)る始末。おそらくこの謎の数日間にわたって、僕はひたすら空返事を繰り返していた。
あぁ〜、いっそここで倒れたりできないかな・・・。って何言ってるんだ、僕。ここ神崎くん家じゃないか。

軽く頬(ほお)を叩いて、部屋を覗(のぞ)く。
多分人生の運気全部ここで使い果たしてるだろうから、しっかり見ておこう・・・。

うわッ!こ、このポスター・・・。
まず目に入ったのは、壁一面に貼られたポスター。若い外国人女性が裸で堂々とタイヤを抱えてる。大事な部分は辛(かろ)うじてタイヤで隠れてはいるけど、こういうのは・・・なんか。
でもその他は思ったより片付いていて、意外と質素。あ、でもよく見ると机の上の小物がオシャレだ。

丁寧に並べられたインテリア雑貨に、ぬいぐるみ。9割がピンク系、多分女の子からの貰(もら)い物だ。
デスクマットの下には、たくさんの写真が置かれている。
全部、今の彼女さんと写ってる・・・。
この写真なんてパンツ見えて─────



「─────何見てんの?」
「っ!」
てっきりまだ準備をしているのかと思っていた彼が、壁に寄り掛かって僕を見据(みす)えていた。
「っ!ぁ、あの─────」
「ねぇ。この際だから聞くけど、輝智くんさ・・・



─────俺のこと好きでしょ」



えっ・・・?

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