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僕の初恋の初恋。
僕の日常はこんなもの


先日、初めて彼に話しかけられた。
正確に言えば多分、いや、かなりの確率でシュークリーム目当てだったのかもしれないけれど。たったそれだけで、僕は久しぶりに晴れやかな心持ちになれた。
まぁ・・・当然のことながら、長くは続かなかったけれど。




バイトから帰ってきて、店長から手渡された封筒の中身を慌てて取り出す。
そんな僕の様子に違和感を覚えた母が、夕食の準備をする手を止めて振り返った。



「おかえり。今日は珍しく早かったけど、気分でも悪いの?」

4万・・・6、7、8千円・・・。



「どうしたの?そんな怖い顔しちゃって。
また学校で何かあったの?」
顔を上げると、決して心中穏やかではなかったが、その場をやり過ごすためにヘラッと笑顔を取り繕(つくろ)った。
「違う、違う。考え事してただけだよ」
「そう?それなら良いんだけど・・・」
あぁ、これはいまいち納得していない顔だ。
当然だろう。僕は昔から大人しく、友達ができない性分。そのせいで、幼い頃からよくからかわれて泣いて帰ってきてたなぁ。

まぁ、状況的には何も変わってないのかもしれないけど・・・。
だって



明日は”集金日”。
僕の今月分のバイト代の回収日とも言う。

あぁ、今月も5万切ってる。・・・最悪だ。
また、殴られたりするのかな。
嫌だな、せっかく彼と初めて話ができたばかりなのに。

放課後、重い足取りで昇降口前の向かいのトイレへと向かった。
この時間帯、ここへは誰も来ない。整備中の札(ふだ)が掛けてあって、通れないようになっているからだ。少し前に新しくなるとか言われてたしね。
人は来ないし、ちょうどいいと思ったんだろう。

そう・・・
現実はこっちだ。
少し話しかけられたくらいで、浮かれ過ぎてた。



「─────ったく、遅ぇよ」
僕の気配に気づいたその顔が、ケータイをいじりながら一瞬、こちらに冷たい視線を送った。

あぁ、最悪だ。
中でも一番気が短く、乱暴な郷田(ごうだ)くんだ。先月は散々な目にあったばかりなのに・・・。



封筒を手渡して、足りていないことへの言い訳を一言。案の定、またしても返り討ちにされた。しかも、今回は見えてしまう顔にまで。

痛い・・・。

壁に押し付けられたその顔を、何事もなかったかのように起こしては、静かにその場を離れた。

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あきゅろす。
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