僕の初恋の初恋。
僕の初恋の初恋(3)
床に手を付いて立とうとするも、足元がガクガクと震えて上手く立てない。
これじゃあ当分、帰れそうにない・・・。
今・・・何時なんだろう。日が傾きかけてるからもう夕方、なのかな・・・。
時間を確認しようと時計を探す間、思わず昨日の自分を思い返した。
彼に気持ちを伝えたくて仕方がなかった11年間。こんな形とは言え、ようやく巡(めぐ)ってきたチャンス。それなのに僕は、今もこうして伝えられないでいる。
結局のところ、僕は何がしたかったんだろう・・・。
想いを伝えたかった?ううん、違う。
僕はそんな綺麗な人間じゃない。
もっとこう、ドロっとした、醜(みにく)い感情だった気がする・・・。
「─────少し大きいかもしれないけど風邪引かれても困るから。とりあえずこれ、羽織ってて。・・・輝智くん?」
彼を見上げる僕の顔には、音もなくゆっくりと頬(ほお)を伝う一筋の光が引かれた。
そしてその隣には、完成には程遠い風景画の前で、ぼんやりと窓の外を眺める一人の姿が、小さな画面の中に綺麗に写し出されていた。
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