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僕の初恋の初恋。
僕の初恋の初恋(2)


「─────あー、そういうことね」
みっともなく垂(た)れ落ちてくそれが染みを広げた。

どうしよう・・・止まんない。
僕がパニックになって動けないでいる傍(かたわ)らで、彼は黙ってティッシュボックスの中身を取り出して濡(ぬ)れた箇所を軽く覆(おお)った。
段取りよくティッシュを回収し終えると、今度は制服をも取り上げようとしていた。

「せ、制服はいいです!その、持ってたいですっ」
「持ってたいって・・・
この制服、一応俺のだから。貸して」
「ぇ・・・!ご、ごめんなさ」
「そんな謝んなくていいからさ、乾燥入れた服乾くまでここに居てよね」

制服のポケットの中からケータイを取り出しては、そのまま床に投げ捨ててく。そして彼が制服を抱えたまま部屋を出ていくその様子を、僕は無意識のうちに視線で追っていた。

僕が言うのもなんだけど、彼は普通じゃない。気が利(き)くのか人一倍狂ってるのかのどっちかだ。
普段人と話す機会のない自分には彼のような人と接点を持つことはまずない。だから断定はできないが・・・彼は多分、後者だ。



静まり返った部屋の中を見渡して。
ふと。
ケータイの画面へと視線を移す。

けれど見て、すぐに後悔した。
その小さな画面からは、驚くほどたくさんのメールや着信履歴がずらりと並んでいた。

普段の彼は誰とどんな話をしているのだろうか。
気にならないと言ったら嘘になる・・・。



タオルを片手に戻ってきた彼が、それを僕に差し出した。満足気に見下ろすその笑みに違和感を覚えつつも、僕は顔を上げて受け取る。
「・・・」
「フッ・・・平然装(よそお)ってるとこ悪いんだけどさ、ケータイ見てたの普通にバレてるから」
「っ!」

見、見られてた!さ・・・最悪だ!

きょとんとした自分の顔に、そっと綺麗な指先が這(は)う。
「あっ」と零(こぼ)れ出た声を気に留(と)めることなくその指が顎(あご)を上向かせてく。

何だろう・・・これ。
以前にも似たようなことをされた。
まるで彼の手の中で転がされてる感覚。
軽く撫(な)でられて、喉の奥がゴロっと鳴った。抗(あらが)えない恐怖に身動きが取れなくなる。

「・・・っ」
「安心して。ケータイに大したもの載せてないし別に取って食おうって思ってるわけでもないから。今は、ね」

今は、・・・って─────
「あ、そうだ。ついでになんか着替え持ってくるよ」
「・・・」

あぁ、もうダメだ。
彼のペースに飲まれそう・・・。

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あきゅろす。
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