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春を待つ君に
恋焦がれて(3)


「彩吹・・・」
繰り返し名前を呼んでは、舞菜の熱い舌が唇を割って口内を這ってく。
「んっ」と、時折鼻にかかったような声を零(こぼ)しながらも、彩吹はそれに応えるかのように侵入を拒む仕草は決して見せなかった。

なんか少しだけ・・・怖いかも。
一度頭に過(よ)ぎったその感覚を必死で否定し続けている間も、舞菜の手が衣服の上から身体の隅々を、確かめるように触れてく。



「─────ッ、マナ!」
自分でも驚くほど大きな悲鳴を上げて、初めて状況に気づいた。
服を捲(めく)られて、外気に晒(さら)された素肌に、舞菜の大きな手のひらが直に触れている。

「あ・・・違う、違うの。少し、びっくりしただけ。平気、だから・・・」

口では何とでも言える。彩吹の場合は特にそうだ。
腰元を軽く撫でてやる。
言葉とは裏腹に、その恐怖を少しでも和らげようと、目をきつく瞑(つむ)って唇を噛み締めている。



「イブ?やっぱりこういうことは良くな」
「嫌!」
「っ、イブ・・・」

駄目だ。こうなると、どんなに言い換えても説得は通用しない。
その小さな身体の上から退(ど)こうにも、服を握りしめては言葉に聞く耳を持たず、嫌の一点張りだ。

引き剥(は)がすわけにもいかない。
困り果てた舞菜が、思わず小さなため息を一つ。
彩吹が恐る恐る目を開くと、既に目に溜まった涙が頬に筋を描(えが)く。

「怖い思いさせるつもりはなかったんだ、ごめ」
「怖く、ないから。全然、怖くない・・・」
不安に瞳を揺らしながら精一杯の強がりでシャツを掴む指先。そこが微かに震えて、まるでヒツジを食い荒らそうとするオオカミの気分だ。

「わかった。じゃあ、代わりに約束がほしい。少しでも怖くなったら言うって、約束がほしい」
「うん。約束する、から・・・」

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あきゅろす。
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