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春を待つ君に
恋焦がれて(2)


疲れているからという理由で、いつもより早い時間に布団に入れられて、納得がいかない彩吹は舞菜のいる隣の寝室を覗いた。

やっぱり寝てないじゃん、舞菜の嘘つき。

サイドテーブルの明かりを頼りに、舞菜の方へと歩み寄る。
「イブ?どうしたの、眠れないのかい?」
追い返されるのではないかと不安になりつつも、ベッドに上がって舞菜の足の上にちょこんと座り込むと、戸惑いの表情を見せる舞菜。

「今日ね、マナと会えなかった分、いっぱい喋って、いっぱい笑って、いっぱい楽しみたかったの。でもね・・・」
「十分楽しいさ。イブが隣にいてくれるだけでいつも」
「ううん。違うの、聞いて。あのね、今日はね、“いつも”じゃないの。”いつも“と違う・・・っ、から」
「わかった、わかったから。とりあえず落ち着こう、ね?」
両肩に優しく手を添えられて、ぼくをなだめようとするも、つたない言葉で懸命に伝え続ける。

「本当は先月渡す、つもりだったんだけど・・・」
そう言って、左手に持っていたサクラ色の小さな箱を目の前に差し出された。



「誕生日・・・おめでとう、二週間も前だけど・・・」
開けてみると、中にはお互いのイニシャルが刻まれた指輪が顔を覗かせる。
彩吹は自分のポッケの中からもう片方のそれを取り出して、指に填(は)めてみせた。
それを真似るように、舞菜も同様に自分の左薬指に填(は)めてみせる。

あっ、って気づいたときには痛いくらいに強く大きな胸に抱きしめられていた。
久しぶりに感じる温かな感触に、甘えるように肩口に顔を押し付けてく。
ふいに、ほろ苦い匂いが鼻を掠(かす)めた。



瞬間。
骨ばった指が彩吹の髪にもぐって、逃げないように頭を引き寄せられる。
軽く、唇をついばまれてく感覚に、小さく身体が跳ねた。
それでも、存在を確かめるように甘くて優しいキスが降ってくる。 頭の芯が軽く痺(しび)れて、何も考えられない。
こんな舞菜は初めてだ。

それから何度も名前を呼ばれた。
普段呼び合っているあだ名、”イブ”なんかじゃなくて、ちゃんと”彩吹”って。
もっと、もっと呼んで。
そう思いながら、次第に横たえられてく身体の震えを抑えようと、ギュッとシーツにしがみつく。

しばらくすると、舞菜の手がゆっくりと身体をなぞるように降りていき、それまで押し殺していた声が零れ出る。
「ぁっ、・・・っ」
ダメ。声、出しちゃ。
マナ、またあのときみたいにやめちゃう。
そんなの絶対イヤ!

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あきゅろす。
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