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春を待つ君に
愛しいキミが吹かせた風(2)


大事な話がある。
そう言って岡の家に出向いた。
真剣な表情を一目見て、彼は黙ったまま部屋に入るよう私を促した。

「いや、ここでいいんだ。話は、すぐに終わるから」
そう言うと、彼のそれが一層鋭さを増した。



「・・・しばらく、仕事場に移ることになった。そこで、一つ頼みがあってここへ来たんだ」

あの子に手を掛けると決めた瞬間から、ずっと考えていたことだ。
岡とは頻繁に連絡を取り合っている。おかげで、あの子が退院日を偽っていたことも、最初から知っていることができた。
なのに、私はそんな彼との約束を破ったんだ。あの子のことを8年も見てきてくれた彼のことを、裏切ったんだ。



当然のことながら、話を終えても納得はしてもらえないでいた。
「それはあんまりだ。彩吹はお前のことばっか考えてんだぞ?少しはあいつの気持ちも考えてやれよ」
「・・・君の口からそんな言葉が聞けるとは思っても見なかったよ。だけど・・・そんな言葉は私には相応(ふさわ)しくないよ。君の忠告・・・聞けなかったんだから」

私の言葉を聞き終えると、彼は心底呆れた様子で頭を抱えた。



しばらく続いた沈黙の後、彼が目の前にいる私を見据えて重い口を開いた。
「ここへはもう来るな・・・」
あぁ、そう言うと思ったよ。
軽く頭を下げて、私は速やかにその場を去っていった。

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