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兄弟のはなし
本音と裏切り(2)


鏡の前で制服の襟元(えりもと)を直して、シャツのボタンをひとつ上まできちんと留めた。

うわ・・・。
後ろから首絞められかかってるみたいな感覚。
でも、これだと四方八方からでも完全防御だ。
その代わり・・・



「・・・イメチェン?」
「聞くな」
クラスのナンバーワンカップルに一体何があったの?!と騒がれる始末だ。
運が良いことに今日は松井ちゃんが体調不良で欠席するってケータイに連絡があったけど・・・



元はと言えば全部アイツが悪いんだ!
アイツがオレにバイトを辞めさせてなければ!
アイツがオレのプライベートに口出ししてこなければ!
アイツがオレに余分な金なんか渡してこなければ!うちがクソ貧乏ってことくらい知ってんだぞ!
それから!
アイツが昨夜あんな・・・、やっぱそのこと考えんのは止(よ)そう。

最後の一個を除いて、オレは真横に置かれたタンスを力一杯蹴り上げた。

バンッ!
「いっ・・・てぇ!」

挙句、蹴った衝撃で本棚の中に置かれた本が何冊か雪崩(なだ)れ落ちてきた。
はぁ〜・・・。

ふと足元に視線を移すと、手のひらサイズの黄色いノートが見開きになっていた。
開かれたそれに思わず目を丸くして釘付けになる。言葉が見つからず、オレはそのまま静かにノートを閉じた。

・・・まぁ、キレたおかげで収穫が一つ。
あいつ、字くそ汚ねぇじゃん!
普段オレの字読めんとか言っときながら、自分はミミズ以下かよ!



7時になると、玄関のドアを開く音が聞こえてきた。

やばっ!
ケータイをいじりながら長々と夕食を摂っていたせいで、ほとんど手をつけてない状態だ。
慌てて口の中に詰め込んで、オレは階段へと向かった。

途中、こっそりと靴を脱ぐ秋人の顔を覗き見ると、頬はまだ少し腫れ上がっている。

オレのせいだ。
昨夜、オレが秋人の顔目掛けて思いっきり殴ったときにできたものだ。
でも、アレは完全に秋人が・・・、

「あ゛〜、ったく!」
何でオレはまたあんなこと思い出してんだよ!

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