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兄弟のはなし
オレのカノジョはお姫様級


学食のスタミナ弁当片手に、オレがいつものメンツの集まるテーブルへ向かうと、話は松井ちゃんのことで持ちきりだった。
喜びを隠しきれないではいるものの、席に着くなり背中を叩かれて、オレは驚きにイラつきが募る。

「やっぱ顔じゃね?」
「性格だろ」
「いや・・・これだろ」
自信満々に片手で胸元に弧を描く大輔(だいすけ)の手を払い除けた。
「おい、冗談だって。そんな怒んなよぉ」
全然反省の色の見えないヘラヘラとした態度に呆れて、オレは箸(はし)を進める。
「って、何でそんなテンション低いわけ?もっと喜べよ」
「嬉しいけどさぁ〜・・・」
「何だよ」
「金」
「は?」
「金がもうねぇ」

始めっから知ってたとは言え、医者の娘である松井ちゃんの家はかなりの富裕層だ。
オレみたいな貧乏人には吊り合わないのかなぁ。
って、何弱気になってんだオレ?
大事なのは心だろ、心!
・・・でも、来週分の金がねぇ。

「バイトしろよ」
「うるせぇ」
学校からバイト禁止令が出てて、毎月生活指導の柴田(しばた)先生が目を光らせてんの知ってるだろーがよ!
ただでさえ頭が悪くて教師に目ぇつけられてんのに生活指導の先生にまでお世話になりたくねぇよ!
それに、

「・・・家のことにまで口出されたくねぇよ」
「なんて?」
「・・・?」
「あッ!俺のメンマ!」



気を利かせて隣の和樹(かずき)のメンマを横取りした隆二(りゅうじ)のおかげでその場をやり過ごすことはできたが、正直参ってる。

帰宅するなり財布の中を覗くも、当然中にはオレの今月の昼食費の千円札が3枚と小銭がちょっとあるだけ。くよくよしていても仕方がないから、オレは尽かさず求人雑誌を漁(あさ)った。



「ただいま〜」
11時過ぎに帰宅した秋人は、リビングのソファで未だに求人雑誌を凝視し続ける姿を見て、背後からページを覗く。

「バイトは禁止されてるだろ」
「秋人は行ってんじゃん」
「俺は・・・いいんだよ」
何だよ、それ。
自分の言い分を言ってやりたい気持ちでいっぱいだったが、オレは喉元まで出かかった言葉を呑んだ。

この2年、金に不自由せずに生活できてるのもコイツのおかげだから。
きっと金にルーズなオレには計り知れないほどの苦労してんだろうなぁ・・・。

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あきゅろす。
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