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兄弟のはなし
それでもオレが兄だから


運動神経抜群な母と成績優秀な父の間に生まれたのが一卵性双生児のオレ、吉見哲(よしみてつ)と秋人(あきと)だ。
両親からは頭の良い子になってほしいということで哲学の哲。そんな両親の希望に近づきたくて勉学に励み続けた結果、どこで間違えたのやら、オレはこの通りの捻(ひね)くれ者に育ってしまった。
中学に上がると同時に、両親の性格の不一致による日々の喧嘩は泥沼離婚と化し、弟との二人暮らしが始まり、現在に至る。

話は少し戻るが、弟の秋人とは双子とはいえ、オレの方が2分差で年上だ。
このことで何度友達と揉(も)めたことやら。
まぁ、確かに〜。
秋人の方が背も高いし、頭も良いし、運動もできるし・・・モテる。




・・・って、そんなことはどうでもよくて!

オレは今日、ついにクラスで一番人気の女の子、松井ちゃんとデートに行くことになったのだ!
普段は20分程度で終える髪のセットも、今日は40分も掛けて毛先まで入念に整えてる。



「──────哲〜、まだかよぉ〜・・・」
何度目かの呼びかけでようやくドアを開けると、秋人は洗面所の隣に置かれた白いタンスの中に積み上がったタオルや下着を上から順に仕舞っていく。

一通りの家事を終えてホッとしながら顔を上げると、オレの顔を見るなりピタッと動きを止めた。

「・・・」
「何だよ」
ジロジロとオレを見ながら、真顔でゆっくりと歩み寄ってくる。気づくと、目の前まで手を伸ばしてきていた。

思わずぎゅっと目を閉じると、頭の上に置かれた手にくしゃくしゃと髪を撫でられた。

「なにポップコーンみたいな頭してんだよ〜」
「ひじきに言われたくねぇよ!」
慌てて秋人の手を払い除けるが、時は既に遅し。鏡に映るありさまに落胆しつつも、なんとか元に戻そうと髪を整えてみたものの、もともと柔らかいオレの髪は参りましたと言わんばかりにくたびれていた。

「あ゛〜、せっかく1時間掛けてセットしたのにぃ〜」
「貸してみ」
オレの背後でのうのうと微笑むその顔にチラリと睨(にら)みを効かせるも、結局呆れ半分で訂正を見守ることにした。


-3分後-
「はい、オッケー」
鏡の前に映っていた自分は、もともとの柔らかい質感を生かして根元が控えめに立たせてあり、毛先は軽く外ハネで存在感を演出していた。



・・・なんかムカつく。

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