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オレら停滞期。
停滞期真っ盛りなう。


小さな窓に枠取られたクリスマス前の街は、すごい人混みだ。
行き交う人が寒さと期待に頬を赤く染めて、赤や緑のクリスマスカラーの溢れる街並みを軽い足取りで通り過ぎていく。



オレはといえば。
築30年のこのアパートの窓から腕を組んで歩くカップルを指をくわえて見ている。
あ〜、マジへこむわ。

深いため息を吐き捨てるオレを気に留めることなく、ケータイに釘付けのこの男こそが今のオレの悩みの種だ。

「やべ、食うもんねぇじゃん」
冷蔵庫の中見もしないでわかるのかよ。
「『それがしのプリン』買ってきて」
「・・・」
「何?」
「パンツ履けよ」


付き合いだしてまだ3ヶ月しか経ってない。
最初の1ヶ月は、とにかくお互いのことを知りたくて毎日会話が弾んだ。
2ヶ月目からは、まさん家で映画見ながらやることもやっちゃったりしてるわけよ。
それなのに何故だ。
何故に3ヶ月目から「ねぇな」言う!
何故に3ヶ月目からモテ期に入る!
何故に3ヶ月目からオレとセックスをしない!

「あ〜!」
「おい、朝からデカい声出すなよ」

早朝からレジ前で頭を抱え込むオレを他所(よそ)に、同僚は来店する客の対応にあたった。

そもそもオレが朝から晩まで週6でバイトに明け暮れてるのも全部アイツのためなのに〜!
「あ゛〜・・・。」
「マジうるせぇ。嘆くなら検品しろ」


昼過ぎに一旦バイトから戻ったオレは、ため息を吐きながら靴を脱いだ。
視線を落とした足元には、踵(かかと)の履き潰されたまさのピンクのクロックス。

「おかえり」
え?
「たっ、ただいま!」
リビングから顔を覗かせてオレの帰りを出迎えてくれる声に思わず口角が上がる。
手にぶら下げたビニール袋を手渡すと、笑顔を浮かべてそれを受け取った。



本日二度目のバイトを終えると、オレはDVD片手に帰宅した。
「まさ〜?久しぶりに映画見ようぜ」
ケータイから視線を上げてオッケーする姿に期待を膨らませながら色違いのマグカップにココアを注ぎ、DVDをセットする。
少し照れくさい気もするが、仕上げに思い切ってまさの肩に頭を添えた。


「・・・さと」
「ん?」
「あちぃよ」
「オレも」
上目遣いを効かせて甘えた声でそう告げると、両肩を掴まれて視線を絡める間もなく、唇を貪(むさぼ)るような荒々しいキスをされた。

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あきゅろす。
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