僕を取り巻く全てには
飼われる身の在り方(3)
前触れもなく、まだ何も知らない純なそこが長い指で埋められていく。
「やぁッ!」
いやだいやだと拒み続ける少年の意志に反して、中で青年の指に絡みつく無数の襞(ひだ)。狭い入り口からゆっくりと奥に向かって押し進んでいくそれに応えるかのように少しずつ形を覚えていく。
「んんッ!・・・ぁ、ッ!」
一度入れたはずの指が途中で出ていくもどかしさに、思わず喘ぎ声が零れ出た。
ふっと離れる体温から慌てて逃げ出そうと触れられた腕を振り切って、無理に身体を横たわらせる。懸命に抵抗し続ける少年を上から見下ろし、ベッドについた膝であっさりと彼の身体を挟み込む。
迫ってくる恐怖に耐え切れなくなった彼が再び悲鳴を上げた瞬間。
ノックの音が部屋中に響き渡り、恐怖のあまり全身が凍りついた。
こちらの様子を気にする素振りすら見せないまま、物音一つ立てることなく小さな箱を両手に抱えている。
「鏡台の上に置いておいてもらえるかい?
・・・ありがとう」
声を押し殺して見られたくない一心で少年は呼吸すらも止めていた。
立ち去ろうとする背中を横目に必死な彼を他所(よそ)に、青年は横たわって露(あら)わになった小さな背中から流れ落ちる汗を指ですくった。ビクビクッと震え上がる肩と慌てて両手で塞いだ口からは甘い吐息が零れ出た。
ようやく聞こえたドアが閉まる音に、思わず頬を伝う涙。身体をうずくまらせて静かにしゃくり上げる彼の顔を伝うそれを指で払い落とし、青年は鏡台に向かう。
一点を見つめては、ひたすら細く短い息を繰り返す間に意識は遠のいていた。
「──────え・・・!」
ギシギシと軋(きし)む音に、上からのしかかってくる重み。思うように続かない呼吸と徐々に増していく圧迫感から目を覚ましていく少年。
ぼんやりとした視界から浮かび上がってきた光景に小さい悲鳴を上げる。外気に晒(さら)された自分は何も身につけておらず、青年の両肩に腿(もも)を乗せていた。
「あとちょっとで終わるから、もう少し頑張ろうね」
もはや少年には、声を上げるほどの体力は残されていなかった。
くたくたになった身体を押し開いて、そそり立つそれに器具を装着した後、ゆっくりとダイヤルを回す。
「っ、・・・んっ・・・っ」
身体が脈打つ度に繰り返される締め付けに、少年は静かに息を吸い込んで、最後の力を振り絞(しぼ)って力いっぱい息む。
「んんッ!」
襲ってくるはずの波が押し寄せてくることはなく、行き場を失って中で膨張し続けたものは勢いよく逆流していった。
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