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僕を取り巻く全てには
屋敷の主人(あるじ)(3)
ひんやりと冷たい手のひらが優しく少年の頬を撫でた。ホッと安堵(あんど)の表情を見せる少年はいつの間にか息を止めていた。緊張のせいか少し汗をかいていた彼に青年は薄ら笑みを浮かべ、手に持っていた水を差し出す。

「──────少し暑かったかな?」

目の前に差し出された水を受け取り、絡めたまま放さない視線に、ぞくりと背筋が震え上がった。

「──────あっ、あの」

長い間誰とも話さなかったせいか第一声を発したものの、何をどう伝えるべきなのかがわからず言葉が続かない。
一瞬、困った表情を見せるも穏やかに微笑み続ける青年は目を細めて優しく告げる。

「とりあえず、ここに居れば食事の心配はいらないよ」



少年の身体の傷口が塞(ふさ)がったのは、それから一週間ほど経った頃だった。
毎晩のように応接間のソファで青年から手当てを受けていた。その度に少年に他愛もない話をしては微笑みを浮かべ、頬を撫でる。

今日も同様に一連の動作を繰り返すのかと思いきや、気づいたときには軽く唇を重ねられていた。

あまりに唐突な口づけに、少年は目を大きく見開いた。
頬から首元まで流れるように下りてきた青年の冷たい指先。
つ、と親指の腹で優しく唇をなぞられた。

透き通るような白銀色の髪が頬を掠めて、微かに震えるそれに再び青年のものが重ねられた。何度も角度を変えながら追いかけてくる柔らかな唇に、すぐに息が続かなくなった少年は無意識にきつく目を瞑(つむ)って眉間に皺(しわ)を寄せる。

もう片方の手を長い間包帯に巻かれて外気に晒されることがなかった少年の素肌に這わせながら確かめるように腰のラインを辿っていく。過敏になっていた素肌は、ビクンと大きく跳ね上がった。

そんな彼を見下ろす青年は、確信を得た満足感に浸りながら静かに薄ら笑みを浮かべていた。

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