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僕を取り巻く全てには
青いバラの青年(2)
部屋の中心には大きなショーケースが並べられている。中に自分と同年代くらいの少年たちがあられもない格好で自身の身体を披露していた。
それをまじまじと観察するかのように眺める男性たち。
中には直(じか)に触って手を這わす者もいれば、玩具(おもちゃ)を使っていたぶる者もいる。

少年は大きく目を見開いて両手で強く口元を押さえた。硬直してしまった彼がカーテンの向こうから覗(のぞ)いていることに見張りの男性が気づく。

背が高いせいか男性はコンパスが長く歩幅が広い。いとも簡単に少年の腕を掴み上げるも、咄嗟(とっさ)に抵抗した際に彼の腕を引っ掻く。それに痺れを切らした男性は少年の頭を鷲掴みにして、そのまま空いたショーケースの中まで引きずる。しかし、少年はショーケースに放り込まれた直後に部屋の隅まで逃げていた。そのまま俯いた状態でそこから離れようとしない。



その様子に目を留めたひとりの青年。
少年が押し込められるはずだったショーケースの前まで歩み寄る。
そこには次のように書かれていた。


『品種番号: 3710
生年月日: 詳細不明
性別: ♂
身長: 157.2
体重: 37.4 』


青年は静かに薄ら笑みを浮かべていた。



宛名のない封筒は、今日も青いバラとともに少年のもとに届けられた。唯一の違いはいつもの他人行儀なものではなく、どこか親しみの込もった印象を受けたことだった。

昼になり、一人ひとりにステンレス製の銀のボウルが配られた。中には一日分の食事が入っているが、全然足りていない。他の少年らが受け取った直後にむしゃむしゃと食べ始める中、少年はひとりボウルの中で牛乳に浸っているパンくずをさらに細かく手でちぎってパンが一滴残さず牛乳を吸い上げるまで待った。

食事を終え、器が回収されていく際に、管理人は何故だか檻の隅に座る少年の方に向かう。殴られると思い、両手で頭を抱え込む少年を他所(よそ)に、彼の右手に手錠をかける。手錠に繋がれたチェーンを引っ張り、有無を言わさずそのまま目的の場所まで連れていかれる。

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あきゅろす。
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