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僕を取り巻く全てには
青いバラの青年(1)


朝日の昇らぬうちにけたたましく鳴り響くアラーム。通常の起床時間より早いにも関わらず、容赦なく僕らを叩き起こす。

一人ひとりに与えられた4畳半の部屋。無機質なコンクリートで仕切られたそれには小さな鉄格子で囲われた窓が一つ。そこから外の景色を眺めていたいところだが、覗く者は誰ひとりとしていない。
当然だろう。
目を光らせて巡回を行う管理人の足音は僕らの中のひとりの調教を意味するのだから。



ゆっくりと歩み寄ってくる足音に無意識に身体が強張る。吐く息が白くかすむほど寒いというのに先ほどまで布団の代わりに包(くる)まっていた刺繍(ししゅう)を残したまま、少年は部屋の隅に屈み込んでいた。

ひやりとした壁に背中を密着させて、徐々に近づいてくる管理人が自分の檻の前で足を止めないことを祈りながら息を殺すが。

管理人は躊躇(ちゅうちょ)することなく鍵を開けて、部屋の隅で拒み続ける少年を壁から引き剥がす。
暴れ回る腕を掴んだまま、引きずるように檻の外に運び出される。

嫌だ、いやだ、イヤだ
抵抗が止まない少年に痺(しび)れを切らせた管理人は袖口に忍ばせておいた注射器を取り出し、少年の腕に打ち込んだ。
ぐったりとした身体を荷物のように肩に担いで別室に運び込んでいく様子に他の少年たちは黙って視線を注ぐ。



ぼんやりと戻ってくる意識の中、少年は少しずつ自分の置かれている状況を把握する。

自分は今、古びたじゅうたんの上で横たわっている。それから・・・誰かあそこに立ってる?裸足だ。

少年はぐったりとした身体を起こしながら辺りを見回した。こちらに視線を向けていると思いきや、目の前で先ほどまで立ち尽くしていた彼はレースカーテンの向こうへと姿を消す。

あっ、待って・・・。
彼の後を追おうとカーテンを覗くと、少年は思わぬ光景を目にする。

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あきゅろす。
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