[long] 第一章 「名前!!最近、お前病院を抜け出してるみたいだな!!」 「…パパ、ごめんなさい」 「まったく、だからいつまでたっても良くならないんだ!パパが仕事から帰るまでちゃんといるんだぞ!!分かったな!」 乱暴に閉められたドア。 よかった。気付かれなかった… 安心してため息をついた。布団の中には1つの紙飛行機。 それは、あの人からの手紙。 パパの仕事場にいる、同い年くらいの男の子。金髪がサラサラで、かっこよかった。 あんな綺麗な人は初めて見た。 でもパパは教えてくれない。 パパの仕事場に一回連れていって貰ったときもあの人はいた。 「ねぇパパ、あの人なんで泥だらけなの? きっとやんちゃなんだね」 「ああ、そうだよ。」 「あの子と遊びたいな。何て言う名前?」 するとパパは怖い顔をした。 「名前。パパの仕事の問題なんだ。 教えられない。」 「へぇ、そうなんだ」 私には、まだ分からなかった。 でも好奇心がそれで押さえられるわけがない。私は次の日、病院を抜け出して仕事場に行った。 あの人は芝生の上に座っていた。そばで見るとますます綺麗な人だった。 「あ、あの、こんにち、は」 緊張しちゃってうまく話せない。でも、あの人はちゃんと聞いてくれたようだった。 「お前…前来てたやつだな」 声も綺麗だった。 「うん。あ、あの…私と、友達になってほしいの!」 「…は?」 「い、嫌だったらいいんだよ!?」 うわあ、恥ずかしいなぁ そりゃ、嫌だよね。知らない人だもん するとその人は少し微笑んで、首を縦にふった。 「…あ、そうだ!手紙かいてきたんだ!」 バッグの中から一枚の手紙を出す。しかし、柵の向こうにいるあの子に渡せるはずがない。 そこで私は思い付いた。 せっせと手紙を折り、柵の上の方に投げた。 「…!」 「紙飛行機! これで文通するの」 紙飛行機を受け取ると、その子は手紙を広げた。なんだか恥ずかしい。 「じゃあ、次は君の番だよ! また明日!」 そう言って、病院へと急いだ。 (始まり) back |