SoulCalibur's Novel 断罪の剣X 腹部の衝撃に彼はよろける。キリクは隙を見て、棒を下から振り上げた。ナイトメアの身体が宙に舞う。 「ぐぅあああぁぁっ…!!」 悲鳴をあげながら、地へと落ちていく。キリクは気絶したナイトメアに見向きもせず、ジークの元へ駆け寄った。 「大丈夫か?」 再度、同じ言葉をかけた。ジークは初めてキリクという名の顔を見た。右の頬に傷を残す青年は、同じ邪気を身の内にまとっているような雰囲気を持っていた。しかし、邪を祓う強き精神を彼は持っていた。俺と似たような奴だ…と彼は思った。 「あぁ…助けた事は礼を言う」 「大したことではないよ。俺もソウルエッジの力をこの棍に吸収させるために此処へ来た」 「…何?」 「邪剣の力を…完全に吸収して浄化して、消すんだ。四年前は力で消すことはできなかった―――だけど、次は必ず」 そこで彼はいったん言葉を止めた。涙をこらえるようにして、空を見上げた。厚い雲が覆う、遠い空を。 「決めたんだ。必ず、償いを果たしてみせる」 「―――――」 償い。その言葉を何度口にしてきたことだろう。もしこの青年がいなければ、俺はあの悪夢に殺られていたというのに。 「…俺は―――」 ジークは傷口を押さえながら、深いため息をつく。 「まだ果たせていなかった……。奴に負けていたと…いうのか…」 目を閉じた。ジークが邪剣を手にしてから、七年の歳月が経とうとしていた。激闘の果てに邪剣を手放すことは出来ても、未だ邪剣を打ち砕くことは成されていない。むしろ、手放したことによって苦しめられる事が多くなった。右手の痛み、邪剣の囁き、虐殺の夢…。それらに抵抗しながら、様々な戦士を斬ってきた。時にはナイトメアと間違われたりした。ジークには、この手では数えきれない程だ。 「……………」 いつしか、長い歳月に思いを馳せていた。傷口の疼痛など感じなくなる程に。キリクも、そして彼の元へ駆け寄ってきていたシャンファもまた口を開かず、ただジークが何かを言いだすまで黙していた。 ジークは剣をぐっと力強く握ると、ナイトメアの元へと歩み寄った。 「…いつまで寝ている。貴様は既に起きているはずだろ?」 「……ふん」 ナイトメアから鼻で笑うような声が聞こえた。剣を握りしめ、杖代わりにするようにして立ち上がる。 「まだ終わってないというのか?笑わせてくれる―――」 言い終わらないうちに彼は、ソウルエッジを高く掲げた。そして静かに呟いた。 「…目覚めよ」 その瞬間。 「―――っ!?」 彼を中心に、風圧がジーク達を襲った。それだけではない。濃い邪気がソウルエッジに集結し、凝縮していく。ぴりぴりと、肌の表面を走る不快感。邪剣の一つ目がぎょろりと動いた。 「なっ…!」 ジークは風圧により三、四歩退いたが、吹き飛ばされる程でもなかった。 「あれが…ソウルエッジの本当の力…!?」 風圧にあおられながら、キリクとシャンファはジークの元へ歩み寄る。あぁ、とうなずきながら、彼はナイトメアを凝視する。 〜前へ〜〜次へ〜 [戻る] |