SoulCalibur's Novel 断罪の剣W 次は横から、斜めから。同じ攻撃の繰り返しで業を煮やした彼は、異形の右腕の巨大な爪をジークの身体めがけて振り下ろす。ジークは身体をひねり、それを避けた。 そしてジークはナイトメアの背後に回った。 ―――躊躇いなく、剣の柄を彼の後頭部に叩きつける。 後頭部からの衝撃に彼は膝をつき、地に伏した。 荒い息を吐きながら―――、ジークはナイトメアを見下ろす。気を失ったのだろうナイトメアは、ただ静かに地に横たわっていた。動かなくなった彼を見、一息ついたジークは鎧のこすれ合う音を響かせながら、ソウルエッジへと歩み寄る。両膝をついて、彼は短剣をゆっくり上げた。 「―――消えろ」 それだけを言い放ち、短剣は振り下ろされる―――はずだった。 「―――…っ……!」 こみ上げる嘔気。口腔内に広がっていく鉄の味。何が起きているのか分からず、視線を腹部へと移す。そこには、 巨大な爪が深々とジークの腹を貫いていた。 気付いた時には既に遅かった。血が鎧の隙間からこぼれ落ちている。握っていた短剣も地に落ち、虚しい音をたてただけだった。それと同時に振り上げていた腕も垂れ下がる。 視線を移せば、気絶していたはずの悪夢が其処に立っていた。紅の瞳をより紅く光らせながら。 巨大な爪を引き抜いた。ジークもその力に引かれる。 「ぁ…がぁ……!!」 かすれた悲鳴をあげながら、今度はジークが地へと倒れる。血だまりが、彼の身体を浸すように広がっていく。身体が熱い。動かない。 彼のそばで何かがこすれる音がした。ナイトメアが邪剣を拾い上げた音だった。 「―――貴様だけは許さん」 言い放つと、両腕で邪剣を高々と掲げる。 「我が闇にひれ伏し、後悔するがいい!」 邪剣が振り下ろされようとしている。力を振り絞ってジークはダメージを受けた身体を動かす。痛みに悶えながら、生きようと足掻く。しかし、刃は空を裂いてジークに迫りくる。 ―…これまでか……!― 彼は腕をかざした。眼を閉じる。力は残り少なかった。 しかし、刃はいつまで経っても身体を裂くことはなかった。 「……………」 何事かと、眼を開ける。そこには刃を受け止める形で人がいた。茶色の短い髪、赤いズボン、そして手には赤い棒。 「…大丈夫か」 凛とした男の声。顔はこちらから見えないが、助けてくれたことから見方とみた。後方から再び声がした。 「―――キリク!」 女の声だった。キリクというのは赤いズボンを履いたこの男のことだろうとジークは思った。 「来るな、シャンファ!」 キリクが制止の声をかける。文字通りシャンファ―後方からした声の主だ―は立ち止まる。 ジークは腹部を押さえながら立ち上がる。 「…すまない、急所は外れている」 それだけを言うと、彼は愛用の剣のところへ行き、剣を引き抜いた。そうしている間にもキリクはソウルエッジを跳ね返す。彼の身長よりも長い棒を使って、ナイトメアの脇腹に一撃を入れた。 〜前へ〜〜次へ〜 [戻る] |