SoulCalibur's Novel 渇望の果て ―――満たされない。その想いは決して消えることはなかった。どんなに戦っても強い輩がいなければ、満たされない想いは黙々と膨らみ続け、眼中にさえなくなってしまうだろう。だが、そのためではなかった。 ソウルエッジと種子島。 その二つの名前が、いつも彼を突き動かしていた。刀一本で渡り歩く彼にとってソウルエッジは強きを求める為に。種子島は刀の強さを証明するためにあった。 ソウルエッジ―――何にも勝る最強の武器。真の姿を見た事はないが、彼はただ、それを求め続ける。 青いはずの空は、厚い雲に覆われていた。薄暗い空は風もなく、少しも動かない。光に照らされることのないその大地に、その建物は存在した。 オストラインスブルグ礼拝堂。 しかし、その礼拝堂は神々しさも一片も見当たらない。 その壁は崩れ落ち、建物の形状を失くしている。窓も割れ、剣と盾を手にした戦士のステンドグラスも、ところどころ床に散っていた。 見渡せば広いそこは、いつしか参拝者のいなくなって久しい礼拝堂と化していた。そして、邪剣と霊剣の戦いの舞台となったのは。 ―――礼拝堂の片隅で、その男はじっと座っていた。獲物の出現を待つ獅子のように、身じろぎもしない。立てた膝、その上に腕を乗せてもう一本の足は伸ばしている。無造作に縛った黒髪も、身につけている甲冑も、遥か東の地、日本のものだった。侍と呼ばれる戦士。 そして彼はゆっくりと眼を開いた。戦う本能をその身の内に潜ませて。視線を動かした先に―――、全てが蒼で包まれた騎士がいた。深く暗い蒼を宿したそれは、明らかにヒトではない変形した右腕を持っていた。その手の中には魂喰らいの剣・邪剣ソウルエッジが握られている。 彼もまた、紅の瞳の内に殺意を潜ませて、こちらを見据えていた。 戦いの本能と蒼き悪夢との間に冷たい空気が流れる。 やがて口を開いたのは―――。 「貴様が内藤だな?」 侍の方からだった。右手には愛刀である刀を握りしめている。蒼騎士こと内藤―――ナイトメアは何も言わない。そして、邪剣を構えるだけだった。それを見て、彼も立ち上がった。口の端を少しだけ、上げて。 「そうこなくちゃあな」 やがて鞘から銀の刃を抜く。それを捉えたナイトメアも一言だけ言った。 「魂を見せてみろ」 「あぁ、見せてやる」 そして、刃が一線を描く。 「俺は御剣だ。覚えておけ!」 〜前へ〜〜次へ〜 [戻る] |