SoulCalibur's Novel 断罪の剣[ ―――誰かに呼ばれたような気がして、ジークは眼を開けた。 視界はぼやけて、あまり見えない。ただ暗闇の向こうに、青い光が見えた。ぼんやりと光っていたそれは、近くで見ればそれほど弱い光ではなかった。 先は二つに分かれた刃のようなもの。それが終わり、一つになった部分には見たことのない言葉が小さく刻まれていた。そこからは複雑な模様の装飾があり、それが左右に翼のように広げていた。その間に挟まれるようにして、青い宝玉。さらにその宝玉を守るようにして、獣の爪が伸びたような柄がついている。 …それは一本の剣だった。まるで、ジークが現れることを悟ったかのように、青い光で自らの存在を示しているのは。本当の希望の光のようで、彼は剣に手を伸ばしていた。 ―これは…この剣は……― 剣をつかむと、何故か身体の底から力が沸いてくるような…それでいて、まるで罪の意識を洗い流してくれるような不思議な感じがした。 ―まさか……― ジークは、ふと思った。 ―これが噂に聞くあの…― しかし。 剣が放つ光が次第に強くなり、いつしか光で視界が覆われて何も見えなくなった―――。 「―――…………」 ジークは再び眼を開けた。そよそよと頬をなでる風に、現実味を感じる。傷を受けて痛む身体も、自らの意志で動かせる関節も、石畳の感触もすべてが現実であると感じた。 「ぐっ………」 腹部を押さえながら、起き上がる。痛みだけは変わらず、強く疼いていた。血流は止まっていたので、ほっとしたが。だが、目の前の物体を見て、彼は眼を見開いた。 夢の中で掴んだ時と同じく、青い光を放つ剣が其処にあった。 夢なのか、現実なのか。その区別がつかず、剣に手を伸ばすのを躊躇った。 ―――その時だった。 「た……けっ…!たす……け、てっ……!!」 助けを求める声が、かすかに聞こえた。ジークは辺りを見回す。 「!」 声の主は当のシャンファからだった。ナイトメアに首を絞められながらも、必死に抗い、声を出していたのだ。途切れ途切れの声はジークには何を言っているのか分からなかったが―――、それでも、もう犠牲者は増やしたくないと思った。 もう二度と、誰かが悪夢の手の中に堕ちることのないように。 邪剣と自分の弱い心が生み出した悪夢を、この手で断つために。 ジークは剣を掴んだ。その瞬間、夢の中と同じように光を放つ。しかし今度は手放すまいと、柄を握る手に力を込めた。 視界のすみでその光をとらえたのだろう、ナイトメアは光に眼を細めながら、こちらに振り返った。そして、眼を見開く。 「この光は…まさか!?」 次第に光が弱まり、収まっていく。剣は形を変えて、姿を現した。 「―――…………」 刃は太く、丈もジークの身体と同じ程の長さであった。刃は二つに分かれていないものの、夢の中でつかんだ感触は一緒だった。ジークは確信した。この剣なら、悪夢に勝つことも可能だと。 ナイトメアはシャンファを手放すと、邪剣を手に歩み寄った。 「その剣…ソウルキャリバーか?」 咳込んでいるシャンファを余所に、ナイトメアはジークに問いかける。ジークは自信に満ちた表情で答えた。 「―――あぁ、そうさ」 〜前へ〜〜次へ〜 [戻る] |