闇の運命に弓引く者
闇と光と運命(さだめ)
「この辺で良いかな?」
呟きながらおじさんを隣町の公園のベンチに寝かせる。
「でいつまで人の後をつけているつもり?」
ギムッ!!
そんな音をたて世界が凍りついた。
「…どういうつもり?」
空間凍結をしかけた張本人の早馬桜ちゃんが不機嫌そうな様子で眼鏡ごしにボクを睨みつける。
「桜ちゃんも闇(ガイア)ってのの一人だったのか。
それは置いとくとして、どういうつもりって?」
「そいつは光(ヴァルハラ)で私達の敵よ。何故外につまみ出すだけなの?」
その問いにウンザリしたように答える。
「冗談じゃない。
光(ヴァルハラ)だから殺す。闇(ガイア)だから殺されるってのはまっぴらごめんだね。」
「それは、あなたが覚醒してないからこその楽観視に過ぎないわ。
光(ヴァルハラ)の連中は私達を邪悪と考え滅ぼすつもりよ。そのためなら、風宮君や国間君が未覚醒でも殺害する気でしょうね。」
本当はボクもひとちゃんも覚醒をしているが、知られるといろいろ五月蝿いから隠している。
「『だから力に覚醒して闇(ガイア)と殺し合え』っていうのは間違いだね。」
「そんなことどうでも良いわ。重要なのわ、『闇(ガイア)の運命(さだめ)』が私達を選んだのよ。だから私達はその運命から踏み外してはいけないのよ。」
ハァ。熱く語る桜ちゃんに深く溜め息を吐いた。だめだこりゃ。何一つ見えてない。
「何を言っても、ボクはこのおじさんを殺す気はないし、桜ちゃんに殺させる気もないよ。」
「風宮君!」
ボクの言葉に桜ちゃんは声を荒げる。その声を無視して桜ちゃんに近づいてその耳元で囁いた。
「桜ちゃん。本当の敵は光(ヴァルハラ)でも、闇(ガイア)でもなくマスター(運命)だよ。」
「…え?」
その言葉に桜ちゃんはボクを凝視する。
「ほら。早く戻るよ。でないと授業が始まるよ。」
桜ちゃんにごまかしの言葉を入れつつ、その場を後にした。
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