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闇の運命に弓引く者
闇の少女



 ボクは目の前でひとちゃんとひとちゃんと犬猿の仲の柊真(ひいらぎまこと)君が睨みあう光景にため息を吐いていた。いつも睨み合いで終わるのは先に手を出すのがイヤだからだろうな。ひとちゃんは先に手を出させて100倍返しするタイプだし。まこちゃんも似たタイプだから。
そんなことを考えながらボクは口を開いた。

「ひとちゃんもまこちゃんも相思相愛なんだね。式には呼んでよ。」
『誰が!!』

 ボクの言葉に2人が同時に叫んでいた。

「テメエの妖しい趣味のせいでこっちが誤解されてんじゃねぇか!! どうしてくれる!!」
「知るか!! むしろ、テメエのせいでコッチはいい迷惑じゃねぇか!!」

 睨み合う事数秒で互いに背を向けてその場を去る。ひとちゃんと共に廊下を歩き、角を曲がった所で

ーぎむっー

 そんな衝撃が脳裏に響き、空間が凍りついた。

「また、要らないちょっかい? 夢も見なくなって一安心だと思ったのに。」
ーそうもいかない。私は少しでも多くの同胞に覚醒して欲しいのだ。ー

 その言葉と共に光球がボク達を襲いかかろうとする。それを寸前で回避してひとちゃんが抗議する。

「テメエ! なんという真似を!」
ー空間と共に凍りついた存在に攻撃しても何の影響も受けない。ー
「それは俺達に当たったらあぶねぇって事だろうが!」
ーイヤなら闇(ガイア)の力と使命に目覚めてみよ。ー
「覚醒とやらをするまでもない。こうすれば良いだけだよ。」

 ボクはそう言って正座をして目を閉じる。

ー何のつもりだ?ー

「君の目的はボク達に闇(ガイア)としての覚醒させる事であってボク達を殺す事じゃない。間違っても当てるわけにはいかないんだ。」
ーなるほど。なら、手を変えよう。貴様等の幼なじみ、岐堂せりあだったか?ー

 脳裏に響く言葉にひとちゃんが声を上げた。

「せりあをどうする気だ!」
ー屋上に来い。話はそれからだ。ー

 その言葉にボク達は屋上に向かった。



「せりあ!!」

 屋上にたどり着いたボク達の目に写ったのは黒い影と、何もない空間に張り付けにされたせりあちゃんだった。

「仁! モミジ! どういうことよ!」
「心配するな。単なる超常現象だから。
それより、せりあを放せ!」
ーそうもいかない。貴様等が闇(ガイア)に目覚めてもらうまではな。ー

 影はそう言って光球を生み出した。
「それやっても同じ事の繰り返しだ!」
ー目を瞑ることは許さん。覚醒を果たすまで避け続けて見せよ。ー
 その言葉にひとちゃんは怪訝な顔をする。

「せりあちゃん。猿芝居はそこまでにしたら? その影の本体はせりあちゃんでしょ?」
「な、なんでそうなるわけ!」

 ボクの言葉にせりあちゃんが怒るが視線が泳いでいる。

「俺達が闇(ガイア)に覚醒するまで避け続けるのは効率が悪過ぎる。下手すりゃ何かの弾みで俺達が死んじまうなんてのもあるわな。んなことをやるより、せりあを落として追い詰めた方が効率がいい。
それをやらないのはせりあが影の本体だからだ。」
「それ以外にも影がせりあちゃんをこの空間に巻き込んだのなら、最初から屋上に呼び出せばいいのにそれをしないし。」
「…ほとんど最初からバレバレじゃない。」

 ふてくされたような表情で屋上に着地すると同時に影が消滅した。

「で、なんでこんなことを?」
「このままほっといたら、地球は人間もろとも死ぬしかなくなる。でも、誰かに任せられない。だからこそ私達闇(ガイア)が立ち上がったの。
それに待ったをかけたのが光(ヴァルハラ)よ。
私達が穏便だとか穏やかだなんて言う気はないわ。だからこそ、闇(ガイア)なんて呼び名を甘んじて受け入れている訳だし。でも、光(ヴァルハラ)はそれに輪をかけてまともじゃないわ。『闇(ガイア)さえいなくなれば世の中良くなるに違いない。俺達が決めた。』
私達は何度も争いあったわ。殺し合い、転生さえも繰り返して。」
「不毛だな。なんて考えなかったのか?」
「少なくとも光(ヴァルハラ)の方は考えなかったみたいね。で、そうなると私達闘うしかなくなる。
前世の仁もモミジも強力な闇(ガイア)の戦士だったけど、光(ヴァルハラ)の軍勢に襲われて殺されたわ。あんな哀しい想いをするのは懲り懲りよ。」

 せりあちゃんの言葉をボクは否定する。

「だからって闇(ガイア)の戦士として光(ヴァルハラ)と、殺し合えってのは間違いだよ。」
「俺は国間仁であり他の誰でもない。前世の為に今を放棄出来ない。
話は終わりだこの状況を元に戻せ。」

 ひとちゃんの言葉にせりあちゃんは小さなため息を吐いた。

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あきゅろす。
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